4月のインフレ率は6.0%、年率は過去30年間で最高の58%

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2022年05月23日

アルゼンチン国家統計センサス局(INDEC)は5月12日、4月の消費者物価指数(CPI)上昇率を発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。全国平均値は前月比6.0%と、3月の6.7%から減速したものの、依然として高い水準だ。前年同月比(年率)では58.0%上昇し(添付資料図参照)、1992年1月以来、最も高い上昇率となった。2022年1~4月の累計上昇率(前年12月比)は23.1%に達した。

INDECによると、季節によって価格が変動する生鮮食品や観光サービスなどの財・サービスは4月単月で前月比5.4%上昇した。エネルギーや公共サービスなど価格統制された財・サービスは3.9%となり、前月の8.4%から大きく減速した。季節要因と価格統制要因を除いたコアインフレ率は6.7%と加速しており、エコノミストらがその動向に注視している。

4月単月を費目別にみると、前月比で大きく上昇したのは、衣類・靴類(9.9%)、外食・ホテル(7.3%)、医療・健康(6.4%)(添付資料表参照)。CPIに占める比重が大きい食品・飲料(酒類を除く)は5.9%だった。2月に7.5%、3月は7.2%の上昇で、4月は減速したものの、中には小麦粉(16.1%)、ヒマワリ油(13.5%)、砂糖(11.8%)、マテ茶(10.0%)と大きく上昇した品目もあった。

アルゼンチン中規模企業連合(CAME)が毎月行っている中小企業の小売り動向調査によると、4月の食品・飲料の売り上げは前月比で4.9%減少した。物価上昇の加速によって消費者が慎重になっており、特にスイーツや菓子類、嗜好(しこう)品とされるチーズ、ハム類などの消費が低下し、低価格帯のセカンドライン商品の購入が増加した。一方で、価格が大きく上昇しているにもかかわらず、売れ行きが好調な商品もある。例えば、薬品・化粧品類(前月比5.0%増)、建築材・電気製品・金物類(5.8%増)、靴類(6.8%増)、衣類(6.3%増)などだ。価格が再び上昇する前にこれらを購入する強い傾向がみられる。

5月12日付現地紙「ラ・ナシオン」によると、民間調査会社のデータでは、5月第1週は前月の同じ週と比較して5.4%の物価上昇がみられた。ただし、これらのデータには、5月の燃料価格(11%)、医療保険(8%)、通話・インターネット料金(9.5%)、CNG(圧縮天然ガス、15.5%)、ビルなどの共益費(15~20%)、私立学校の学費(8%)などの引き上げの影響は含まれていないとしている。また、2022年のインフレ率の見通しは70%を超える可能性が高まったと分析している。

写真 ブエノスアイレス市内のスーパーで陳列商品の値札が混雑している様子。急速なインフレにより頻繁に価格が変動している(ジェトロ撮影)

ブエノスアイレス市内のスーパーで陳列商品の値札が混雑している様子。急速なインフレにより頻繁に価格が変動している(ジェトロ撮影)

(山木シルビア)

(アルゼンチン)

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