タイ米USTR代表、WTO事務局長と会談、新型コロナ対応などを議論

(米国、EU、インド、南アフリカ共和国)

ニューヨーク発

2022年05月02日

米国通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ代表は4月28日、訪米したWTOのンゴジ・オコンジョ=イウェアラ事務局長とワシントンで会談した。会談には、USTRのマリア・ペイガン次席代表(駐スイス・ジュネーブ)とWTOのアンジェラ・エラード事務局次長も参加した。

USTRの声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、タイ代表とオコンジョ=イウェアラ事務局長は、WTO加盟国の間で議論されている新型コロナウイルスへの対応策について協議した(2021年6月14日記事参照)。タイ代表は、WTOでの議論が行き詰まる中、米連邦議会への働き掛けを続け、できるだけ多くの人々に早期に安全で効果的なワクチンを供給できるよう取り組むと強調した。両氏はまた、6月12~15日に開催予定の第12回WTO閣僚会合(MC12)や、世界の食糧安全保障への懸念、重要分野でのサプライチェーンの課題についても議論を行った。

米国とインド、南アフリカ共和国、EUは、新型コロナワクチンなどをめぐり、WTOのTRIPS協定における知的財産保護の放棄に関して非公式に議論している。バイデン米政権は保護の放棄を支持しており(2021年5月7日記事参照)、USTRは3月、議論の結果「具体的で意味のある成果を達成する最も有望な道筋を示す妥協策」を見いだしたとの声明を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。ただ、文書での合意には至っていないとして、米政府としてWTO加盟国への関与を続ける姿勢を示していた。

米国内では野党・共和党を中心に、米企業の知財が他国に渡ることなどへの懸念から、保護放棄に反対する声が強い。また、与党・民主党からも、WTOでの議論に関する情報開示が足りないとの批判も出ている。3月末に行われた議会公聴会(2022年4月5日記事参照)でタイ代表は、知財の尊重を示しつつ、途上国のニーズに対応するためにWTOが何をできるかを模索するのがバイデン政権の取り組みだと説明した。USTRは4月27日に公表した知的財産に関わる年次報告書(2022年4月28日記事参照)でも、新型コロナワクチンの知財保護放棄への支持をあらためて表明している。

(甲斐野裕之)

(米国、EU、インド、南アフリカ共和国)

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