経済省貿易細則を新たに公布、円滑化より規制強化が目立つ

(メキシコ)

メキシコ発

2022年05月19日

メキシコ経済省は5月9日、経済省貿易細則・判断基準省令の最新版外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを官報で公布した。これまでは、2012年末に公布されたものを必要に応じて改正し、改正部分のみ官報公示してきたが、2021年12月までに合計45回の改正を重ねて現行規則が不明瞭になったことを考慮し、今回は全体を一括更新版として公布した。この中には新たな改正や判断基準などが含まれており、内容は多岐にわたる。重要な内容は以下のとおりだが、円滑化措置よりも規制強化の側面が目立つ。

  1. メキシコ貿易手続き単一窓口(VUCEM外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で行う手続き以外は、電子メールを通じて行うことを可能にする。経済省の指定メールアドレスをCCに入れることで、フォローアップ番号が付与される(細則1.3.4)。
  2. さまざまな手続きで必要となる自由書式申請書に盛り込む内容を明確化(同1.3.5)。
  3. 鋼材・鉄鋼製品の輸入自動通知(2013年12月17日記事2014年8月22日記事参照)に際し、提出が求められるミルシートや品質証明書の記載要件として、「自筆のサイン、またはQRコード」を追加(同2.2.19)。
  4. 国際クーリエ便を利用して簡易通関される2,500ドル以下の商品の場合、メキシコ公式規格(NOM)対象品目であっても同適合証明書の提示義務を免除(同2.4.11のIX)。
  5. 産業分野別生産促進プログラム(PROSEC、注1)登録企業が自社利用のためにNOM対象品目を輸入する際のNOM履行免除について、部品・原材料のみが免除対象と限定し、資本財の場合は免除しない(同2.4.11のXのh)。
  6. 輸出向け製造・マキラドーラ・サービス産業(IMMEX)プログラム(注2)およびPROSECに関連し、事業所についての公証人作成の事実実験公正証書(Fe de hechos)の提出が求められる手続き(注3)を限定。ただし、同証書を作成できる者を「経済省に認定された公証人」に限定(同3.1.1)。
  7. 事実実験公正証書の提出の代わりに、経済省の査察官などに現場査察を要請可能(同3.1.1)。
  8. 同一住所に複数のIMMEX企業が所在する場合、各社の施設スペースが明確に区分されて独立していなければならず、申請時に明確に説明する必要あり(同3.2.5)。
  9. 国税庁(SAT)の保税認定(注4)を有する企業は、IMMEXプログラムのセンシティブ品目(注5)を一時輸入するための特別な手続きが不要だが、経済省に対してE-mailでの情報提供が必要(同3.2.19)。
  10. IMMEXプログラムの登録申請の際に提出した企業の情報(注6)に変更が生じた際、10営業日以内に経済省に届け出る必要あり(同3.2.19)。
  11. 保税認定がない企業のセンシティブ品目の期限付き一時輸入許可(数量枠)の更新の際、現行許可の下で一時輸入した商品の100%(従来は70%)を再輸出していないと更新申請できない(同3.3.7)。

なお、7.で事実実験公正証書の代わりに当局の現場査察を依頼した場合、公証人に支払う報酬の節約が可能だが、申請から承認までの期間が延長される。通常は、申請から10~15営業日が法定審査期間だが、当局に現場査察を依頼した場合はさらに10営業日が追加される。

(注1)24業種の国内生産を支援する目的で、当該業種の生産に必要な部品・原材料、機械設備の輸入関税を減免するプログラム。

(注2)製品やサービスの輸出を条件に、当該オペレーションに必要な部品・原材料、機械設備の一時輸入(保税輸入)を認めるプログラム。

(注3)事実実験公正証書が必要な手続きは、IMMEXプログラムの新規申請、サービス形態の保税プログラム拡充、修理・補修・再製造のためのプログラム拡充、保税オペレーション形態の変更、センシティブ品目の一時輸入許可、PROSECの新規プログラム登録申請に限定し、従来は必要だったIMMEXオペレーションを行う施設の追加登録、委託製造先の登録、センシティブ品目の一時輸入許可の更新の手続きでは、公正証書が不要になる。

(注4)一時輸入プログラムを利用して一時輸入する際に、付加価値税(IVA)や生産サービス特別税(IEPS)の支払いを保留(繰り延べ)するための企業認定。

(注5)砂糖、鋼材・鉄鋼製品、繊維、アルミニウム、スクラップ、たばこなど。

(注6)会社名、納税者登録番号(RFC)、株主・パートナー、法的代表者、税務上の住所などの変更が対象となる。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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