バイデン米政権、対ベネズエラ制裁を緩和へ、原油輸入再開と与野党対話の促進図る

(米国、ベネズエラ)

米州課

2022年05月24日

米国政府高官は5月17日、バイデン政権が対ベネズエラ制裁の一部を緩和することをメディアに明らかにし、政権は同日、米国石油会社シェブロンがマドゥーロ政権と操業の継続に関する協議を再開することを認めた。

各種報道によると、米国による対ベネズエラ制裁の緩和には、主に2つの思惑があるとみられる。1つは、原油の輸入再開だ。ジョー・バイデン大統領がロシア産原油の禁輸を発表する3日前の3月5日、米政府高官がベネズエラの首都カラカスを訪問し、ロシア産の代替としてベネズエラ産原油を輸入するために、制裁の緩和を交渉したとみられている。また、同月8日には、ベネズエラで拘束中だった米国民2人が解放された。シェブロンは、両国のやり取りが活発になった3月以降、米国によるベネズエラ産原油の禁輸措置緩和に備えて、現地で米国への原油輸入を再開する手続きを進めていた。今回の同社とマドゥーロ政権の協議再開は、5月17日のニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)の原油先物相場にも影響を及ぼし、5営業日ぶりの反落となった。加えて、米財務省がベネズエラの国営石油会社PDVSAの元幹部で大統領夫人のめいに当たるエリック・マルピカ氏に対する制裁を解除する見通しともなっている。

もう1つは、ベネズエラの与野党対話の再開だ。米国は、ニコラス・マドゥーロ大統領による不正選挙などを理由に、2019年1月23日に暫定大統領に就任したフアン・グアイド元国家議長を同国の指導者と見なしており、例えば、駐米ベネズエラ大使はグアイド氏側が指名したカルロス・ベッキオ氏が務めている。与野党対話は2021年8月13~15日と9月3~6日に開催されたが、同年10月17日から予定されていた3回目は中止となった(2021年10月26日記事参照)。その要因は、2020年6月にイランへ向かっていたマドゥーロ政権側のアレックス・サーブ氏が航空機の燃料給油で立ち寄った西アフリカのカーボベルデで逮捕され、長期の拘留を経て、2021年10月に資金洗浄の容疑で米国へ移送、訴追されたことにある。マドゥーロ大統領は、米国による今回の発表を踏まえ、近いうちに野党側との協議再開を発表する見通しで、バイデン政権は協議の進展次第で対ベネズエラ制裁を大幅に解除するとの立場を示している(ロイター5月18日)。

その他の中南米諸国との外交政策では、バイデン政権は5月17日、トランプ前政権時に強化された対キューバ規制を緩和すると発表した(2022年5月18日記事参照)。ロシアによるウクライナ侵攻をめぐって、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を支持してきたキューバのディアス・カネル政権や、ベネズエラのマドゥーロ政権に対するバイデン政権の政策転換は、2国間関係だけでなく国際政治にも影響を与えそうだ。

(片岡一生)

(米国、ベネズエラ)

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