ラオス中銀、外貨不足の原因と対策を発表

(ラオス)

ビエンチャン発

2022年05月19日

ラオスでは、5月8日ごろから首都ビエンチャンにおいてガソリンの供給が滞り、社会問題化した(2022年5月12日記事参照)。5月19日現在も、主要なガソリンスタンドでは給油が可能なものの、休業しているガソリンスタンドも多くみられ、地方でも不足する地域が出ている。本問題について5月13日、ラオスの石油輸入販売大手であるペトロリウムトレーディングラオのチャントーン・シティサイ社長は記者会見を行い、「会社の外貨調達不足により輸入が滞る中、国民のパニック買いが不足に拍車をかけた」と説明した。

また、5月16日には、ラオス中央銀行のソーンサイ・シッパサイ総裁が記者会見を行い、「コロナ禍から回復する中で、世界的なドルの価値の上昇やインフレの加速(2022年4月15日記事参照)により、外貨需給の不均衡が加速している」と説明。その原因として、(1)ラオスの商業銀行を介した外貨決済の割合は、輸入では33%のみである一方、輸出では98%と差があること(注1)、(2)公定為替レートと違法な市中レートに開きがあること(2021年9月24日記事参照)、(3)現地通貨キープが下落する中、外貨確保へ国民が殺到し、さらなるキープ安を招く悪循環が生じていること、(4)対外債務問題、を挙げた。本問題に対して、中央銀行は、金利の改正や国債の発行など、政策ツールを介して通貨供給量の管理を強めるとともに、違法な両替店への厳罰化を行うとした。さらに、商業銀行を介した外貨決済を増やすために、改正外貨管理法案を6月の国会に提出するなど、法整備を進めると説明した。国民には国産品を購入し、不必要なサービス消費を控えるなど節約節制に努め、外貨支払いを減らすように協力を呼び掛けた。

なお、世界銀行はラオスの最新の経済レポートの中で、2021年にラオスの対外公的債務残高がGDPの66%にまで拡大し、この債務返済に多額の外貨を必要とするためドルに対する急激なキープ安を招き、その結果、外貨での債務返済コストを高くしているとも指摘している。ラオス中央銀行によると、2021年末の外貨準備高は12億6,300万ドル(注2)にすぎない。

写真 ラオス中央銀行(ジェトロ撮影)

ラオス中央銀行(ジェトロ撮影)

(注1)外国の銀行口座からの決済や、製造業における原材料の無償支給などにより生じているとみられる。

(注2)世界銀行の分析では、ラオスの商品・サービスの輸入の2カ月分以下の水準。

(山田健一郎)

(ラオス)

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