カナダ中銀、政策金利を0.5ポイント引き上げ1.0%へ

(カナダ)

トロント発

2022年04月14日

カナダ中央銀行は4月13日、政策金利を0.5ポイント引き上げ1.0%とすると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。0.5ポイントの大きな利上げは2000年5月以来となる。政策金利を前回発表した2022年3月にも0.25ポイントを利上げしており(2022年3月3日記事参照)、2020年3月に始まった新型コロナウイルス感染拡大による低金利政策から脱却した。

さらに、経済刺激策として実施していた量的緩和政策で買い入れた国債の保有を減らす「量的引き締め」についても、4月25日から開始予定とした。

ティフ・マックレム中銀総裁は同日の記者会見で、カナダ経済の現状に対するメッセージとして「第1にカナダ経済は好調だ。景気は新型コロナ禍から完全に回復し、現在は需要超過に移行している。第2にインフレ率が高過ぎる。予想以上に高く、以前考えていたよりも長く上昇が続くものとみられる。第3に利上げが必要なことだ。政策金利は、経済の均衡を保ち、インフレ率を目標の2%に戻すために主要な手段だ」と説明した。

カナダでは、2022年第1四半期(1~3月)の経済成長は力強く、経済が需要超過に移行していることが中銀の企業経営者への景況感調査でも明らかになっている(2022年4月12日記事参照)。

加えて、カナダの2月の消費者物価指数(CPI)上昇率は約5.7%と約30年ぶりの大きさで、中銀の1月の金融政策報告書での予測の5.1%を上回った。これを受けて中銀は、同時に発表した金融経済報告書で2022年のCPI上昇率見通しを前回1月の4.2%から5.3%へと大幅に上方修正しPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)、その要因として「ロシアによるウクライナ侵攻が想像を絶する人的被害と新たな経済的不安を引き起こしており、石油や天然ガス、その他の商品の価格高騰が世界中でインフレに拍車をかけていること、戦争に起因する供給の混乱が既に生じていた供給の逼迫を悪化させ、経済活動の重荷になっていること」を挙げた。

今後の動向について、マックレム総裁は「より正常な状態に向けた利上げが続くことを想定すべきだ。より正常とは、経済を刺激も圧迫もしない中立的な金利と考えられる範囲内という意味で、中立金利は直接測定可能なものではなく推定するしかないが、2~3%の間と見積もっている」と説明し、今回の1.0%への利上げによっても中立金利や新型コロナ禍前の1.75%には届いていないとして、さらなる利上げを示唆した。

また、カナダ国債の満期による買い替え停止による「量的引き締め」について、当地の報道によると、国債の約4割が今後2年以内に満期を迎えるため、中銀のバランスシートは比較的早く縮小する可能性があると予測されている(4月13日付「グローブ・アンド・メール」紙)。

次回の政策金利発表は6月1日の予定となっている。

(飯田洋子)

(カナダ)

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