米行政管理予算局、現状では気候変動でGDPの最大10%損失の恐れと試算

(米国)

ニューヨーク発

2022年04月05日

米国行政管理予算局(OMB)は4月4日、気候変動による洪水、火災、干ばつなど自然災害によって、現状のままだと今世紀末までに最大10%のGDPを損失する恐れがあるとの試算を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。これは年間の連邦政府歳入の7.1%に相当、現在価値では2兆ドルに達する。2021年5月、OMBに対し気候変動による財政上の評価分析の作成を毎年求める大統領令が施行されており、2023年度予算公表直後のタイミングで今回初めて試算が作成された。

試算ではまた、気候変動によって年間に250億から1,280億ドルの連邦政府の追加支出が今世紀末までに生じるとしている。主な支出例として、ハリケーン被害対応で最大940億ドル、海面上昇の浸水被害による建物など交換費用で437億ドル、干ばつなどによる火災対応で最大96億ドルの追加支出が発生する。実際にこうした気候変動リスクは年々高まっており、関係機関は警鐘を鳴らしている。海洋大気局(NOAA)は米沿岸の海面が2050年までに最大30センチ上昇する可能性があるとの報告書を公表しているほか(2022年2月21日記事参照)、民間天候予報機関のアキュウェザーは、2022年は過去7番目にハリケーンの多いシーズンになると予想している(ロイター4月4日)。また、NOAAは、西部を中心に米国本土の60%近くが既に干ばつ状態にあり、2013年以来で最悪と指摘しており、気候変動による被害は年々深刻さを増している。

OMBは先日発表した2023年度予算で(2022年3月29日記事参照)、気候変動への対応で、前年度比約60%増の449億ドルを計上したとしてその意義を訴えているが、本予算の成立時期は毎年遅れがちで、2022年度予算は3月になってようやく成立したばかりだ(2022年3月14日記事参照)。既に深刻化している気候変動による被害に対して、バイデン政権が機動的かつ効果的に資金を投入できるかが今後注目される。

(宮野慶太)

(米国)

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