中国、エネルギー安全保障を強化へ、ロシアとの天然ガスパイプライン延伸の計画も継続

(日本、中国、ロシア、ウクライナ)

中国北アジア課

2022年04月08日

中国の国家発展改革委員会と国家エネルギー局は3月22日、「『第14次5カ年(2021~2025年)規画』期間の現代エネルギーシステム規画」を発表した。同規画は、第14次5カ年規画期間中のエネルギー関連政策の方針を示したもの(2022年3月31日記事参照)。

国家能源局の責任者は、同規画の重点として、(1)エネルギーのサプライチェーンの安全性と安定性の強化、(2)エネルギーの自主供給能力の強化、(3)2025年までに非化石燃料エネルギーの比率を発電量ベースで39%前後とすることを挙げた(「人民日報」3月25日)。

規画の発展目標では、その筆頭にエネルギー安全保障のさらなる強化が位置付けられており、2025年までの供給能力の増強についての数値目標に加え、エネルギーの自主供給能力を向上させるとの方針が示された。具体的政策としては、戦略的安全保障の強化との位置付けで、国内の盆地や海域における石油・天然ガスの探査・新規開発による供給力の増強のほか、安全保障の強化に向けた戦略的技術の蓄積を進めるとした。技術の蓄積に向けたプロジェクトとしては、内モンゴル自治区オルドス、陝西省榆林市、山西省晋北市などにおける石炭液化戦略基地の建設の検討に加え、セルロースエタノール、バイオディーゼル、バイオジェット燃料などの非穀物由来の生物燃料の開発を大幅に強化する。

また、規画では、天然ガスの貯蓄と需給に応じた調整能力の強化の方針も盛り込まれた。具体的には、天然ガスの地下貯蔵および液化天然ガス(LNG)受け入れターミナルにおける貯蔵施設の計画・建設を一体的に推進する。

さらに、規画では、石油・ガスの輸入元の多元化を進めるとの方針も示され、これらの輸出大国との間で互恵的な協力を開拓・強化することも盛り込まれた。

中国とロシア間の天然ガスパイプラインの延伸計画を継続

規画では、地域ごとの重点インフラプロジェクトが示されており、中国・ロシア間で運用されている天然ガスパイプライン(中ロ東線)の中国東北地域における支線管路の整備も明示された。また、天然ガスパイプラインの建設計画として、中ロ東線の南区間(河北省廊坊市永清県から上海市)への延伸を引き続き進めることも盛り込まれた。南区間が完成すると、既に稼働しているロシア連邦サハ共和国(ヤクーチヤ)南部のチャヤンダ鉱区から中国国内の北区間(黒竜江省黒河市から吉林省松原市長嶺県)、中央区間(吉林省松原市長嶺県から河北省廊坊市永清県)を経由し、上海市までの天然ガスの供給が実現する(注、2019年12月12日記事参照)。

なお、2021年の中国の対ロシア輸入をみると、鉱物性燃料(第27類)が全体の7割弱を占める。HSコード4桁ベースで輸入額上位品目をみると、石油ガスその他のガス状炭化水素(天然ガスなど)(2711)は3位で、前年比80.5%増の43億4,659万ドル。ロシアの構成比は6.0%にとどまるが、2011年から4.5ポイント上昇して拡大傾向にある(2022年3月17日記事参照)。

(注)中国・ロシア間を結ぶ天然ガスパイプライン(ロシア国内の「シベリアの力」から中国国内に連結する「中ロ東線」)は、2019年12月に北区間(黒竜江省黒河市から吉林省松原市長嶺県)が稼働し、2020年12月に中央区間(吉林省松原市長嶺県から河北省廊坊市永清県)が稼働した(「新華社」2020年12月3日)。南区間(河北省廊坊市永清県から上海市)は2021年1月に全面的に建設が開始された。稼働は2025年予定とされている(「経済日報」2021年1月7日)。

(藤原智生)

(日本、中国、ロシア、ウクライナ)

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