米USTR、メキシコの不透明な貿易慣行に懸念表明、2022年外国貿易障壁報告書(メキシコ編)

(米国、メキシコ)

米州課

2022年04月11日

米国通商代表部(USTR)が3月31日に公表した2022年版「外国貿易障壁報告書(NTE)」(2022年4月4日記事参照)において、メキシコに関する記述に11ページを充てた。報告分野には、非関税障壁、貿易の技術的障壁(TBT)、衛生植物検疫(SPS)障壁、政府調達、知的財産権保護、サービス障壁、デジタル貿易障壁、投資障壁が挙げられた。

貿易上の非関税障壁に関して、メキシコが2013年12月以降、特定の鉄鋼製品を輸入する業者に対してライセンスの取得を義務付けてきたことに言及し、行政手続きの遅延と複雑な手続きが米国の鉄鋼輸出業者とメキシコの顧客に混乱を招いた、と指摘。メキシコは一定の基準を満たした米国輸出業者およびその顧客にライセンス取得要件を合理化した代替スキームを確立したが、当該スキームの運営を注意深く監視していく、と記述した。また、通関上の問題点として、メキシコでは参考価格と輸入許可証の使用により、履物、アパレル、繊維製品の輸入を規制しているが、参考価格の決定方法が不透明で、税務当局の執行に均一性がなく、税関手続きの変更に係る事前通知が不十分で、税関での規制要件の解釈にばらつきがあるとした。

TBTについて、2020年発効の品質インフラ法(2020年8月31日記事参照)に触れ、2022年に公表予定の同施行規則が米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の履行に抵触しないかを注視する意思が示された。メキシコの32州のうち25州が、18歳未満への加工食品やノン・アルコール飲料の販売禁止を検討していることにも懸念を示し、2020年10月にWTOのTBT委員会で、メキシコの州レベルでの当該措置に疑問を呈した旨明らかにした。

政府調達分野については、メキシコ政府が2018年12月に汚職や官僚的な非効率性をなくすため、ほぼ全ての政府調達案件を大蔵公債相の管轄下に集約した後も、調達プロセスは透明性に欠け、入札に必要な準備時間が十分確保されていないとした。福祉保健機構(INSABI)と国連広報センター(UNOPS)は、2021年に同国政府の医薬品および医療機器の調達プロセスを改善したと報告したが、がん治療をはじめとする公的医療サービスの供給不足は解決されていない、と指摘した。

また、知的財産権保護について、米国は知的財産に関するスペシャル301条報告書に、模造品や海賊版が流通する悪質な市場リストにメキシコを加えており(2022年2月18日記事参照)、物理的市場だけでなく、オンライン市場でも当該製品が広まり、インターネットの普及に比例してオンライン上の著作権侵害が増加しているとの憂慮を示した。

(片岡一生)

(米国、メキシコ)

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