スリランカやパキスタンなど南西アジアの一部の国は利上げにかじを切る

(ASEAN、南西アジア、オセアニア)

アジア大洋州課

2022年04月26日

スリランカ中央銀行は4月8日に、政策金利を引き上げることを発表した。ASEAN主要国(インドネシア、タイ、フィリピン、マレーシア、ベトナム)、南西アジア(インド、スリランカ、バングラデシュ、パキスタン)、オセアニア(オーストラリア、ニュージーランド)の政策金利の動向をみると、スリランカ、パキスタンといった南西アジアに加えて、ニュージーランドが直近では政策金利を引き上げた(添付資料表参照)。4月13日に利上げしたニュージーランドは、4会合連続で政策金利を引き上げている(2022年4月14日記事参照)。

スリランカでは、中央銀行がサプライチェーンの混乱や物価上昇などから、政策金利の1つである預金金利を6.5%から13.5%に一気に7ポイント引き上げた。3月のインフレ率は21.5%になり、国内では政策運営の不満からデモが起こるなど、治安情勢も悪化している(2022年4月12日記事参照)。同じく、インフレ圧力の強いパキスタンにおいても、中央銀行は4月7日に政策金利を9.75%から12.25%に引き上げた。なお、パキスタンの3月のインフレ率は12.7%と2桁の伸び率となっている。ニュージーランドは、インフレ期待の高まりの回避という観点から、予防的に小刻みな利上げを続けている。

ASEANの中央銀行は、政策金利の引き上げには、様子見の姿勢だ。例えば、域内最大の経済規模を持つ、インドネシア中央銀行は、4月19日に政策金利を3.5%に据え置いた。背景には、経済の先行き不透明感がある。同日に、中央銀行は景気見通しを引き下げている。中央銀行は、インフレ抑止よりも、国内景気に配慮した格好だ。3月のインフレ率が2.6%と南西アジアの国と比較して、低いことも利上げ見送りの背景にある。今後、ASEANにおいても、ロシアによるウクライナ侵攻に伴う物価高の本格的波及や米国連邦準備制度理事会(FRB)の大幅利上げに伴う為替の減価からインフレ率がさらに上昇した場合、中央銀行は、インフレ率抑止のための利上げか、景気への配慮のための引き締め政策見送りのどちらをとるかといった難しい局面に立たされる。

(新田浩之)

(ASEAN、南西アジア、オセアニア)

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