ポルシェ、チリで合成燃料を製造するプロジェクト企業に出資

(ドイツ、チリ)

ミュンヘン発

2022年04月15日

ドイツ自動車大手フォルクスワーゲン(VW)傘下のポルシェは4月6日、HIFグローバルに7,500万ドルを出資し、株式の12.5%を取得すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

HIFグローバルはチリや米国、オーストラリアで合成燃料(e-fuel、注)の製造プロジェクトを実施している企業。今回、ポルシェ以外にも複数企業が出資する。

また現在、HIFグローバルがチリ最南部のマガジャネス州プンタ・アレーナスで手掛ける合成燃料生産プロジェクト(2021年5月18日記事参照)には、ポルシェやエネルギー大手シーメンス・エナジーなどのドイツ企業が参画している。風力発電設備から水素製造のための電解槽、合成燃料製造設備までを1カ所に統合した世界初の合成燃料商用製造プラントとして、2022年半ばに稼働する予定。風力で発電した電気を使って水を電気分解し、得られた水素と二酸化炭素(CO2)を使って合成燃料を製造する。大気中のCO2を使うため、使用時点でCO2を排出しても脱炭素燃料と見なされる。同施設では2022年に約13万リットル、2024年までに約5,500万リットル、2026年までに約5億5,000万リットルの合成燃料を製造する予定だ。

ポルシェは同プロジェクトで製造した合成燃料を当面はモータースポーツで試験的に利用する。また、自社工場で生産した内燃機関搭載車の出荷時の燃料や試乗施設での利用を見込む。ポルシェは電気自動車の販売を加速している(2022年3月29日記事参照)一方で、これまでに販売した同社の内燃機関搭載車のうち約7割が市中に残っているとしており、合成燃料を活用した脱炭素化に可能性を見いだしている。

ドイツ連邦政府は2020年12月、チリでの上記プロジェクトに参画するシーメンス・エナジーに823万ユーロを助成するなど、ドイツ企業の技術を活用したかたちで国外での合成燃料製造を支援してきた。また、2021年12月に発足したドイツ新政権も連立協定書(2021年11月26日記事参照)で、EUの「Fit for 55」に基づく2035年の実質的な内燃機関搭載車の廃止(2021年7月16日記事参照)を支持するとしつつも、「合成燃料を使用する自動車のみは新規登録できるように尽力する」と明記している。

(注)合成燃料はCO2と水素を合成して製造する。ガソリンやディーゼル燃料の代わりに合成燃料を用いれば、乗用車の既存の内燃機関を使用したまま、カーボンニュートラルに近づけられるとされる。

(高塚一)

(ドイツ、チリ)

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