チリ初のグリーン水素によるE燃料生産プロジェクト承認

(チリ)

サンティアゴ発

2021年05月18日

チリの大手エネルギー事業者アンデス・マイニング・アンド・エナジー(AME)のグループ会社HIF(Highly Innovative Fuels)による国内初となるグリーン水素(注1)を利用したE燃料(注2)生産プロジェクトが5月11日、南部マガジャネス州の環境アセスメント委員会によって承認された。同州内にE燃料の生産プラントと3.4メガワット(MW)の風力タービンを建設すべく、必要な許認可取得の手続きを行う。同プラントでは、風力発電によって水と水素を分解し、取り出した水素と二酸化炭素を組み合わせることでメタノールを生成し、そこからガソリン車やディーゼル車にも使用できるE燃料を生産する。プラントの試験的な稼働は2022年から開始し、年間で13万リットルのE燃料を生産する見込みだが、商業化を伴うプラントの本格稼働は2024年末に予定している。

HIFが生産するE燃料に関しては、既にドイツの大手エネルギー事業者マバナフト(Mabanaft)との間でプラントの商業化後に最大5億リットルの燃料を売買する了解覚書(MOU)が締結されているが、現在は複数の鉱業事業者から同様の引き合いが寄せられており、合意形成へ向けた交渉が進められている。

今回のプロジェクトはAMEのほか、イタリアのエネル・グリーン・パワー(Enel Green Power)、チリ国営の石油会社エナップ(ENAP)とともにシーメンス(Siemens)やポルシェ(Porsche)といったドイツの大手企業も参加している。また、ドイツ政府がシーメンスを通じて800万ユーロの出資を行ったことでも注目を集めている。チリ政府は2020年11月に「グリーン水素国家戦略」を発表しており(2020年11月12日記事参照)、将来、グリーン水素の生産、輸出の両面で世界を牽引する国家となるための仕掛けが国内で着々と進行しつつある状況がうかがえる。

(注1)再生可能エネルギーにより水を電解して生成した水素。

(注2)グリーン水素と二酸化炭素を合成することで作る合成液体燃料。

(岡戸美澪)

(チリ)

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