欧州委、GI制度の見直し案を発表、EUIPOの協力には懸念の声も

(EU)

ブリュッセル発

2022年04月07日

欧州委員会は3月31日、農産品〔ワイン、蒸留酒(スピリット)を含む〕の地理的表示(GI)制度(注)を見直し、新たな登録手続きなどを定めた規則案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。欧州委は2021年にGI制度の評価を行い、GI制度がEU産品の付加価値創出につながっているとしたが、一方で、一部の加盟国で消費者の認知度が低い、また知的財産のエンフォースメント(権利行使)が十分ではない、と指摘し、さらに製品の特性に「環境に対する持続可能性」などを盛り込むべきだとした。そこで、同規則案で以下のような措置を提案し、地域経済の活性化やGI製品の保護強化を目指し、EU全体でGIの登録数を増加させるとした。

(1)これまで複数の規則によって定められていた登録手続きを統合、単一化する。EU域内、域外の申請者に共通したルールが適用される。これにより手続きを簡素化、迅速化し、登録申請を増やす。

(2)オンライン・プラットフォームでの販売、ドメインネームシステム(DNS)における悪意あるGIの登録や名称の使用からの保護など、特にインターネット上におけるGIの保護を強化する。

(3)生産者が製品仕様に社会、環境、または経済的持続性に関する取り組みを盛り込み、認定要件として定めることを可能とし、持続可能性の向上を目指す。

(4)加盟国に申請し、GI製品の生産者グループとして認定を受けたグループが、加盟国の模倣品取り締まり機関や税関と協力し、GI認定の活用、保護に取り組むことを可能とする。

欧州委は引き続きGIの登録手続きを担うが、変更点として注目されるのは、EU知的財産庁(EUIPO)が登録手続きの迅速化を図るため、欧州委に技術的な支援を行うとされた点だ。欧州委は2020年に発表した知財行動計画(2020年11月26日記事参照)でGI製品の知的財産権の保護強化の方針を打ち出していたが、EUIPOが協力することで、EU域内外でのGI製品の名称保護や模倣品対策を強化する狙いがある。

生産者団体や欧州議会からはEUIPOの協力に警戒感も示される

欧州最大の農業生産者団体COPA-COGECAは3月31日付の声明において、同規則案においてGI登録手続きの迅速化や、製品の保護や生産者グループへの支援の強化などに焦点が当てられた点などを歓迎した。しかし、生産者の視点から見ると疑念もあるとし、特にEUIPOは「知的財産権に特化した機関で、農業部門やGI製品の特性について理解していない」とし、EUIPOが制度に関与することへの強い懸念を示した。また、こうした声は既に欧州議会やEU理事会(閣僚理事会)でも上がっている、と指摘。実際、欧州議会のエレーナ・リッジ議員(イタリア選出、アイデンティティと民主主義グループ)は欧州委に対して、EUIPOの参画によって、GIが登録商標化し、その運用が徐々に民営化されるのではないか、との質問を提出。これに対して、欧州委側は、EUIPOが関わるのは登録手続きやEU域外国での知的財産権への注意喚起に関してだけで、欧州委がGI製品に関わる政策の全般を担うのは変わらない、と回答している。 COPA-COGECA は、GI制度が成功したのは産地や生産者の「ノウハウ」が各製品の品質の高さや特色に結びつけられているからだと強調し、EUIPOの参画に警戒感を示した。

写真 地理的表示保護(PGI)製品の塩と原産地呼称保護(PDO)製品の生ハム。消費者はロゴで識別できる(ジェトロ撮影)

地理的表示保護(PGI)製品の塩と原産地呼称保護(PDO)製品の生ハム。消費者はロゴで識別できる(ジェトロ撮影)

(注)登録手続きなど、EUのGIについてはジェトロ調査レポート「EU の地理的表示(GI)保護制度PDFファイル(735KB)」(2015年2月)を参照。

(滝澤祥子)

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