バイデン米大統領、国防生産法の活用で重要鉱物の国内生産増へ

(米国)

ニューヨーク発

2022年04月05日

米国のジョー・バイデン大統領は3月31日、1950年国防生産法に基づいて、国防長官に、大容量蓄電池などに使用するリチウムなど重要鉱物の国内生産増に向けた取り組みを指示する覚書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに署名した。

国防生産法は、国防に必要な資材やサービスの供給に関して、大統領に国内産業界を統制できる権限を与えている。最近でも、トランプ前政権が新型コロナウイルス感染拡大を受けて、国内自動車メーカーなどに人工呼吸器の生産を要請するなどの活用例がある。バイデン大統領は3月31日に石油戦略備蓄の追加放出(2022年4月1日記事参照)を発表した会見で、国防生産法の活用にも触れた。大統領は「電気自動車(EV)や再生可能エネルギーの貯蓄をする蓄電池に使われるリチウムやグラファイト、ニッケルなど重要鉱物の国内サプライチェーンを確保するため、国防生産法を使う。未来の力の源泉を中国やその他の国に長く依存していた時代を終わらせる必要がある」と発言している。

今回の覚書では、大容量電池用の重要鉱物が国防に不可欠と指定した上で、国防長官に対して、重要鉱物の国内生産能力を高めるためのフィージビリティースタディーなどの支援や、重要鉱物の国内生産基盤に関する調査内容をまとめた大統領および議会宛ての年次報告書の作成などを指示している。重要鉱物の国内生産増に向けた国防生産法の活用については、3月11日に超党派の上院議員が大統領に書簡を送って要請するなど、働きかけが行われていた。署名者の1人ジョー・マンチン上院エネルギー・天然資源委員長(民主党、ウェストバージニア州)は3月31日、「バイデン大統領が重要鉱物のサプライチェーン強化を求める超党派の呼びかけを真剣に捉えて、5つの不可欠な鉱物(注)の生産増のために国防生産法を発動したことを歓迎する」との声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを出している。

バイデン政権は発足直後に署名した重要製品の国内サプライチェーンを強化するための大統領令14017号に基づき、主要州や産業界との取り組みを進めており、2022年2月には重要鉱物に関する成果を発表するラウンドテーブルを開催している(2022年2月24日記事参照)。政権は国防生産法の活用で、取り組みをさらに加速させる意気込みだ。

(注)マンチン議員の声明では特定されていないが、大統領覚書で例示したリチウム、ニッケル、コバルト、グラファイト、マンガンを指すと考えられる。なお、大統領覚書では、重要鉱物をこれら5種類に限定する表記にはなっていない。

(磯部真一)

(米国)

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