ロシアのウクライナ侵攻、中国のロックダウンが2022年世界貿易を下押し

(世界)

国際経済課

2022年04月14日

WTOは4月12日、世界貿易見通し(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した。2022年の世界の財貿易量を前年比3.0%増と予測(添付資料表参照)。従来の見通しを下方修正した。また、2023年の世界貿易量の伸び率予測は3.4%増と、2022年から微増する見通しを示した。

2022年の世界貿易量は、前回見通し(2021年10月)の4.7%増から下方修正となった(2021年10月5日記事参照)。その主な要因の1つとして、2月24日から開始されたロシアのウクライナ侵攻による不確実性が増したことを挙げる。WTOは「世界貿易量に占めるロシア、ウクライナ両国のシェアは小さいが、食品やエネルギー、肥料などの主要な供給国」とし、特に、黒海封鎖によって穀物輸出が停止されており、途上国を中心とする食糧安全保障が脅かされる危険性を指摘した。

2022年の輸出量の伸びを地域別にみると、中東で前年比11.0%増と最も高く、次いで、CIS(同4.9%増)、北米(同3.4%増)と続く。輸入量では、輸出と同様に中東が11.7%増と最も高く、中南米(同4.8%増)、北米(同3.9%増)との順となった。輸出入ともに増加となる地域がほとんどだが、輸入におけるCISの伸び率はウクライナ侵攻の影響を受け、12.0%減と大幅な減少となった。他方で、同地域の輸出が増加を維持しているのは、ロシアからのエネルギー供給に依存している国があるためと説明した。

WTOはまた、現時点で世界貿易の動向を左右するもう1つ重要な主要素として、中国における新型コロナウイルス再拡大に伴う主要都市のロックダウン措置と海上輸送の混乱を指摘した。3月下旬から上海市や周辺都市で実施されている封鎖管理によって、域内での移動が制限され、港湾や国内物流をはじめとするサプライチェーンに混乱が生じている(2022年4月12日記事参照)。

WTOは今回の世界貿易量の予測に影響を与えた要因として、(1)インフラの破壊や貿易コスト増を含むウクライナ侵攻の影響、(2)一部銀行の国際銀行間通信協会(SWIFT)からの排除を含むロシアへの制裁措置、(3)企業や消費者の信頼感の低下と不確実性の高まりによる総需要の減少を挙げた。WTOのンゴジ・オコンジョ=イウェアラ事務局長はこれら世界的な混乱に起因する物価高騰などを受け、「生活必需品に対する急激なインフレ圧力やサプライチェーンが圧迫されている現状で、貿易の円滑化に向けた政府や国際機関の協力が不可欠」と強調した。

(田中麻理)

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