米運輸省、燃費基準未達メーカーへの罰金引き上げ対象を2019年製車に前倒し

(米国)

ニューヨーク発

2022年04月01日

米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)は3月27日、連邦政府が定める企業別平均燃費基準(CAFE)に達しなかった自動車メーカーに対し、現在予定している罰金額引き上げの開始対象を2022年製車から2019年製車に前倒しする最終規則を発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。メーカーに対するより厳しい対応を通じて、温室効果ガスの早期削減を目指す。同規則は連邦官報に公開されてから60日後に発効となる。

連邦政府は1975年に成立した「エネルギー政策・保存法(Energy Policy and Conservation Act)」に基づき、CAFE基準値に満たない部分をクレジット(注)で補えない企業に対し、1ガロン当たりの未達分0.1マイルごとに一定額の罰金を科している。罰金額の単価は2016年7月に、2019年製以降の車両に対してそれまでの5.5ドルから14ドルに引き上げたが、2021年1月に当時のトランプ政権は引き上げ対象を2022年製車に先送りした(2021年8月23日記事参照)。その後、バイデン政権は一連の規制見直し(2021年1月22日記事参照)の一環として、2021年8月に対象を2019年製車に差し戻す規制案を発表し、業界団体や自動車メーカーと調整を重ねていた。規制案に基づいて募集したパブリックコメントでは、国内の自動車メーカーを代表する業界団体の自動車イノベーション協会(AAI)や、燃費基準の順守が難しいとされるステランティスなど個別の企業が前倒しに反対を表明する一方で、クレジットの売却で利益を得る電気自動車メーカーのテスラや環境団体は早期の引き上げを求める意見を提出していた。

今回の最終規則の発表に関し、AAIのジョン・ボゼーラ会長兼最高経営責任者(CEO)は「こうした(罰金を財源とする)資金が政府の一般財源に姿を消すのではなく、電気自動車、バッテリー、充電インフラに投資されれば、環境、製造業者、労働者、消費者にとってより良い結果なるだろう」と述べ、既に製造されている車両にさかのぼって罰金を科すことに対し不満を表明した(E&Eニュース3月28日)。他方、NHTSAは、そもそも2016年に罰金額の引き上げを決めた際に、その対象は2019年製車と定めており、企業には十分な調整の期間が与えられていたと主張。「一部の製造業者は、NHTSAが調整を遅らせたり回避したりする可能性に期待して、法令順守のよりどころや生産計画を決定した可能性がある」といった厳しい見方を示している。

(注)基準値の超過分をポイントとして貯蓄し、未達時などに一定の要件下で利用したり、売買したりすることが可能。

(大原典子)

(米国)

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