バイデン新大統領、環境関連の大統領令に署名、トランプ前政権の全ての規制の見直しなどを指示

(米国)

ニューヨーク発

2021年01月22日

ジョー・バイデン米国新大統領は1月20日、パリ協定復帰を決定するとともに(2021年1月21日記事参照)、環境関連の複数の措置を盛り込んだ大統領令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに署名した。同大統領令では、公衆衛生や環境を促進・保護する責務を果たす上で、「連邦政府は、最善の科学(的見地)に導かれ、意思決定の公正性を確保する過程によって保護されなければならない」とし、各省庁・政府機関に対して、トランプ前政権下で発布された連邦規則などを見直し、気候変動危機に取り組むための作業を直ちに開始するよう、指示した。具体的には次の措置が含まれる。

  • 2017年1月20日~2021年1月20日の間に連邦政府によって定められた全ての措置についてレビューを行い、環境保護などの政策に合致しない政府機関の規則などの見直し、およびそれら規則などの一時停止、改定または廃止の検討
  • 温室効果ガス排出増加による社会的費用の算出およびそのための省庁間作業部会の設置[大統領経済諮問委員会(CEA)委員長、行政管理予算局(OMB)局長、科学技術政策局(OSTP)局長が共同議長を務める))
  • カナダのアルバータ州と米国のネブラスカ州を結ぶキーストーンXLパイプラインの建設許可撤回

政府機関による規則などの再検討の対象には、自動車の燃費規制も含まれた。具体的には、トランプ前政権が制定した新たな燃費基準を含むSAFE車両規則PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)2020年4月14日記事参照)と、燃費基準制定の権限を連邦政府に一元化するための「One National Program RulePDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」(2019年11月7日記事参照)が含まれており、見直し期間はそれぞれ2021年7月、同年4月までと定められた。なお、SAFE車両規則の一時停止、改定、または廃止の提案を検討する際、関係当局は労働組合、州および業界の代表者の見解を考慮する必要があることも明記されている。トランプ前政権はSAFE車両規則で企業平均燃費(CAFE)に関して、毎年5%ずつ上昇させるとしたオバマ政権下での基準値を、1.5%に緩和していた。One National Program Ruleでは、大気浄化法(Clean Air Act)の下で認められていた、カリフォルニア州に対する適用除外を取り下げている。

なお、石油パイプラインの建設中止について、カナダのジャスティン・トルドー首相は「失望しているが、バイデン大統領の選挙公約を果たすための決定と認識している」と述べた(ABCニュース1月21日)。

(宮野慶太、大原典子)

(米国)

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