米内務省、連邦政府による石油・ガスリース制度改革の報告書公表

(米国)

ニューヨーク発

2021年12月06日

米国内務省は11月26日、連邦政府による石油・ガスリース制度改革に関する報告書を公表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。ジョー・バイデン大統領は1月に、公有地や水域での石油・ガス開発のリースと許認可に関する慣行について、包括的な見直しを内務省に命ずる大統領令に署名しており(2021年1月29日記事参照)、報告書はこの大統領令を受けて作成された。

報告書では、石油・ガス事業のために連邦政府所有の土地をリースする現在の事業構造について、「(同事業によって生じる)気候変動コストを考慮しなくとも、この事業は納税者に対して公平なリターンを提供できていない」と厳しく指摘している。特に財政的な要素については、事業者が連邦政府に支払うロイヤルティー率(現状は事業利益の12.5%)が「100年間値上げされていない」点を挙げ、「時代遅れ」であり、使用料を引上げるべきと指摘している。加えて、現在の1エーカー(約4,047平方メートル)当たり2ドルという現在の最低入札額についても、投機目的の入札を促しているとし、価格見直しに着手すべきとの考えを示した。また、同事業が天然資源や野生生物、地域社会の健康と安全などに直接的・間接的な影響を及ぼしていると述べた上で、政府の石油・ガス事業の根本的なバランスを見直すべきと指摘している。

米国石油協会は今回の報告書について、既にガソリン価格が高騰している中、この提言は国内のエネルギー生産者の生産コストを上乗せするものだと批判している(ロイター11月26日)。実際に、グリーンエネルギー推進を背景としたバイデン政権の石油ガス産業に対する厳しい姿勢を前に、関連企業は開発投資に二の足を踏んでいる。民間調査会社ライスタッドエナジーのデータによると、米シェールガス企業が事業で得た利益を同事業に再投資した比率は2021年第3四半期(7~9月)46%となり、長期平均の130%を大幅に下回り、過去最低となったとしている。また、米エネルギー情報局(EIA)によると、2021年10月の米国の原油生産量は日量平均1,140万バレル(約181万立方メートル)と、2019年の同平均1,230万バレル(約195万立方メートル)を約7.3%下回っており、エネルギー需給が逼迫する中でも米石油関連企業は増産に動いていないことがうかがえる。こうした状況から、バイデン政権は原油増産を国外に求めるが、OPEC プラスは12月2日、現状の増産ペース維持を決定した。バイデン政権は国内外ともにグリーンエネルギーを積極的に推進しているものの、これもエネルギー価格高騰に寄与しているとの指摘もある。新型コロナウイルスの新たなオミクロン株の出現によって、今後のエネルギー需要の予測が不透明となる中、ガソリンなどのエネルギー価格に対して、バイデン政権が今後どういう対応を取るか注目される。

(宮野慶太)

(米国)

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