欧州工作機械工業連盟、欧州委に鉄鋼セーフガード措置の再考を要請

(EU)

ブリュッセル発

2022年04月12日

欧州工作機械工業連盟(CECIMO)は4月8日、欧州委員会に対して、鉄鋼セーフガード措置を見直すことを求める声明を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。この措置は、鉄鋼製品26品目について関税割当枠(クオータ)を設定し、割当枠を超過すると25%の関税を課すというもので、2018年に暫定発動、その後、2021年6月末を期限として2019年に正式発動された。欧州委は2021年6月、その期限をさらに3年間延長し、2024年6月末まで引き続き実施されている(2021年7月5日記事参照)。

同措置については、欧州の鉄鋼ユーザー業界から以前より不満の声が上がっており、CECIMOも、鉄鋼セーフガード措置の延長に際して発表した政策提言書(2021年6月)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)において、関税割当枠において設定された量はEU域内の鉄鋼需要を満たすのに十分ではないと指摘していた。また、欧州の鉄鋼市場だけでなく、中国、CIS諸国、トルコ、インド、イランといった主要鉄鋼輸出国も競争力を高め、世界的に鉄鋼製品の価格が上昇していることから、輸出志向の高い欧州工作機械工業部門の国際競争力に悪影響を与える、と主張していた。今回の声明でも再び、鉄鋼セーフガード措置は「欧州の鉄鋼メーカーの生産量増加につながる適切な手段ではない」と懸念を示し、欧州委に対してセーフガード措置の見直しを求めた。

ウクライナ情勢急変により、鉄鋼調達の厳しさ増すと主張

CECIMOが今回、見直しを求める背景には、「新型コロナ危機」以降、欧州産業界が直面するエネルギーや原材料の価格の高騰、サプライチェーンの混乱に伴う競争力の低下への懸念があるだけでなく、2022年2月下旬に始まったロシアによるウクライナへの侵攻も関係する。

欧州委は3月上旬、ロシア、そして協力国とみなすベラルーシへの制裁の一環として、両国からの鉄鋼製品を輸入禁止とした(2022年3月11日記事2022年3月16日記事参照)。欧州委は3月16日、EU域内で鉄鋼不足が起きるのを回避するため、鉄鋼セーフガードにおいてロシアとベラルーシへ割り当てていた輸入量を他の鉄鋼輸出国に再配分すると発表し、4月1日から新しいクオータの適用を開始した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

しかし、CECIMOは両国からの鉄鋼製品が輸入禁止となったことで、鉄鋼製品の調達がより難しくなったとし、現在、鉄鋼の調達に悩む会員企業にとっては、再割り当てが「適切かつ時期にかなった対応ではない」と主張した。そこで、従来から懸念を示していた鉄鋼セーフガード措置そのものを見直し、鉄鋼価格や需給バランスの安定を図るべきだとした。

(滝澤祥子)

(EU)

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