米USTR、デジタルプラットフォーム規制策定の動きに懸念、2022年外国貿易障壁報告書(日本編)

(米国、日本)

米州課

2022年04月12日

米国通商代表部(USTR)は、3月31日に発表した2022年版「外国貿易障壁報告書(NTE)」(2022年4月4日記事参照)で、日本について前年と同じ18ページを充てた。米国から見た日米貿易協定や日米デジタル貿易協定の評価、関税など輸入政策による米国産品の輸出障壁、各産業分野での米国企業にとっての日本市場参入障壁、デジタル貿易にかかる懸念などについて報告した。

USTRは2020年1月に発効した日米貿易協定について、米国産農水産物の90%以上の関税が撤廃または特恵関税の適用を受けていると評価し、具体的な障壁の撤廃に関わる成果として、日米貿易協定に基づく対米牛肉への緊急輸入制限(セーフガード)適用条件の見直しで日本政府と実質合意したことを挙げた。日本が2021年3月にセーフガードを発動し、米国産牛肉が一時的に日米貿易協定の特恵関税を受けられなくなったことを受け、その後、日米政府は牛肉セーフガードの発動トリガー水準を引き上げることで基本合意している(2022年3月25日記事参照)。一方で、コメや特定の乳製品、フルーツジュース、ペットフード、ブドウ、冷凍ブルーベリー、砂糖、チョコレート、加糖ココアパウダー、サケやタラを含む一部魚介類など、高い関税により米国産農水産物の日本市場へのアクセスが制限される重要品目もあり、依然として障害は残ると指摘した。

また、日米貿易協定と併せて2020年1月に発効した日米デジタル貿易協定について、国境を越えた情報伝達を円滑化する高水準の条項が盛り込まれていると評価した。一方で、オンラインショッピングモール運営企業や、モバイル端末向けのアプリケーションソフト配信サービスを提供する大手デジタル事業者を日本政府が「特定デジタルプラットフォーム事業者」として指定し、利用条件やターゲティング広告などへの規制を策定する動きに触れ、日本でサービスを展開するグーグル、アマゾン、アップルなどの米国企業に影響を与えるとの懸念を示し、米国は今後の動向を注視していくとした。

NTEでは、米国視点で日本に対する輸出や投資に対する広範な障壁の撤廃への要望を示した一方、USTRがNTEに先立って3月1日に発表したバイデン政権の通商政策を示した「2022年大統領通商政策アジェンダと2021年年次報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」では、日本について、米国の大切な貿易相手国であり、緊密な同盟国と記載した。日本との鉄鋼・アルミニウム製品の関税協定(いわゆる232条、2021年11月15日記事参照)に関する合意を引き合いに、2021年11月17日に立ち上げが発表された「日米通商協力枠組み」(2021年11月18日記事参照)を通じて、日米両国が定期的に会合を開き、2国間の貿易問題に取り組むことを示している。

(葛西泰介)

(米国、日本)

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