欧州産業界、EUに対して積極的な自由貿易協定の締結や早期発効を要望

(EU)

ブリュッセル発

2022年03月11日

ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)、欧州工作機械工業連盟(CECIMO)、欧州自動車工業会(ACEA)など、欧州の25の産業団体は3月7日、EUに対して自由貿易協定(FTA)を引き続き政策上の優先事項とすることを要望する共同声明PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した(CECIMOプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

25団体は、欧州委員会が2021年2月に発表した新通商戦略(2021年2月19日記事参照)において「開放性」や「積極的なEUの利益の擁護」に焦点を当て、発表以降、公正な競争環境の創出を目的とする多くの提案をしたものの、実際のビジネスを後押しするような変化はあまりなかったと述べた。そして25団体は、FTA締結に関しては特に「開放性」が重要だと強調し、「新型コロナ危機」の経験から、不確実性があっても、輸出入を行う能力があることは、産業界全体が状況に適応していくためには非常に重要と指摘した。

その上で、開放的で、自由かつ公正な国際貿易手段を擁護することは、欧州経済が「新型コロナ危機」からの回復途上にある中、欧州の企業や雇用、経済的繁栄を守ることだと述べた。また、EU企業にとって公正な競争環境を確保することは、企業規模を問わず、全てのEU企業の競争力維持につながると主張した。

FTAの交渉後の早期発効や積極的な締結をEUに提言

共同声明で、25団体はEUに対する提言として、第1に「EUは交渉が終結した後、FTAをできるだけ早く発効させるべきだ」と提言した。例えば、メルコスールとのFTAは、2019年に欧州委とメルコスールの間で大筋合意に達したが、その後、協定の署名には至っておらず、発効に向けて進展がないままとなっている。25団体は、EUが国際的に強力で、影響力を持つ信頼できる存在であり続けるには、FTAの早期発効の重要性を認識する必要があると主張した。

次に、EUは、日本を含めた15カ国が参加する地域的な包括的経済連携(RCEP)協定など、欧州域外で多くの協定が締結・発効していることをよく考慮し、EU産業界の国際競争力維持のために、積極的にFTAの締結を進めるべきだと提案した。EUは国際的なルール形成を主導する立場であり続ける必要があると指摘し、特にEU米国貿易技術評議会(TTC)(2021年9月30日記事参照)において、米国と規制に関する協議を継続し続け、それをEU米国間のFTA交渉へとつなげるべきだと主張した。

また、インドやASEAN各国とのFTA交渉も加速させるべきだとした。そして、しっかりとした交渉に基づいたFTAは、関税の撤廃や規制分野における協力の進展などを通じ、締結相手国・地域においてEU企業が公正な競争環境を確保しながら、貿易機会を増やす上で重要な役割を果たすとし、EUの利益の擁護のため、EUがより積極的な通商政策を推進することを支持するとした。

(滝澤祥子)

(EU)

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