米政府、英国からの鉄鋼・アルミ輸入に関税割当を導入へ、一定数量まで追加関税を免除
(米国、英国、中国、ロシア、ベラルーシ)
ニューヨーク発
2022年03月24日
米国商務省および米国通商代表部(USTR)は3月22日、1962年通商拡大法232条に基づく鉄鋼・アルミニウム製品に対する追加関税措置(232条関税)について、英国からの輸入に関税割当(TRQ)を導入し、一定数量まで追加関税の適用を免除すると発表した(商務省/USTR
)。また、英国は同日、米国からの輸入の一部に課していた報復関税を停止すると発表
した。
232条関税は2018年3月以降、個別の交渉により適用除外や数量割当、またはTRQの扱いを受けた国・地域(注1)以外からの、鉄鋼およびアルミ輸入に対し課されている。追加関税率は鉄鋼が25%、アルミが10%となっている。米英両政府は2022年1月、232条関税を含めて世界的な鉄鋼・アルミの過剰生産問題の解決に向けた協議を開始することに合意していた(2022年1月20日記事参照)。
米商務省が発表したTRQの詳細は以下のとおり。
- 2022年6月1日以降、英国からの鉄鋼製品54品目は年間50万トン(注2)まで、未加工のアルミ製品2品目は年間900トンまで、半加工のアルミ製品〔アルミ箔(はく)(関税分類番号7607)を除く〕12品目は年間1万1,400トンまで、アルミ箔2品目は年間9,300トンまで追加関税の適用を除外する(注3)。
- 鉄鋼製品が適用除外を認められるには、英国で鋳造工程が行われたことを証明する関連書類を輸入者が提出しなければならない。半加工のアルミ製品が適用除外を認められるには、主原料となるアルミが中国、ロシア、ベラルーシ産以外でなければならない。
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2020年1月の大統領布告9980号
で232条関税の対象に含めていた鉄鋼・アルミ派生品は、追加関税の適用除外となる。
- 申請ベースの品目別追加関税適用除外制度は従来どおり継続する。
- 年間のTRQの枠は、鉄鋼製品は四半期ベースで、アルミ製品は半期ベースで管理される。
米英両政府が同日に発表した共同声明によると、鉄鋼製品については、中国の事業者(中国で登記している企業を含む)によって所有または支配されている英国の生産者が輸出する場合には、英国は米国に別途、TRQの利用に関する証明書を提出するとしている。この証明書は、第三者が実施する年次監査に基づき、鉄鋼の過剰生産に寄与する市場歪曲(わいきょく)的な行為が当該生産者によって行われていないことや、非市場的な鉄鋼過剰生産能力に実質的に寄与していないことを証明するものとしている。また、中国政府と関係のある事業者からの補助金の受給の有無など、生産者およびその親会社の財務情報も監査対象となる。
そのほか、米英両政府は共同声明で、鉄鋼・アルミの非市場的な過剰生産能力に対処するため、税関協力、貿易救済措置での協力、両国間の鉄鋼・アルミ貿易のモニタリング、非市場的な過剰生産能力および炭素強度に関する協力を実施し、これらの取り組みを毎年評価していくと明記した。
(注1)対象国・地域は次のとおり。
- 鉄鋼の適用除外:オーストラリア、カナダ、メキシコ
- 鉄鋼の数量割当:アルゼンチン、ブラジル、韓国
- アルミの適用除外:オーストラリア、カナダ、メキシコ
- アルミの数量割当:アルゼンチン
- 鉄鋼・アルミの関税割当:EU
上記のほか、日本に対しても鉄鋼の関税割当を発表し、4月1日から適用を開始予定(2022年2月9日記事参照)。
(注2)英国で鋳造工程を経た後、EUで加工され、EUの原産性を得た鉄鋼製品も、年間3万7,800トンまで今回のTRQの対象となる。
(注3)品目の詳細は、鉄鋼製品は商務省発表文書内のAnnex 1、アルミ製品は同Annex 2を参照。
(甲斐野裕之)
(米国、英国、中国、ロシア、ベラルーシ)
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