日米政府、鉄鋼・アルミ産業に関する共同声明発表、米商務省は日本の鉄鋼製品への関税割当発表

(米国、日本)

ニューヨーク発

2022年02月09日

米国商務省および通商代表部(USTR)は2月7日、日本政府との間で鉄鋼・アルミニウム産業に関する共同声明を発表した(商務省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますUSTR外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

鉄鋼関税とは、トランプ前政権が1962年通商拡大法232条に基づき、他国からの鉄鋼・アルミニウム製品輸入に対して一律に発動した追加関税(以下、232条関税)を指す。適用除外や数量割当、関税割当(TRQ)の扱いを受けた国・地域(注)以外からの輸入には原則、鉄鋼製品に25%、アルミ製品に10%の追加関税が課されている。日米両国は、本件の解決に向けて2021年11月に協議を開始していた(2021年11月15日記事参照)。

米商務省公開の232条関税の文書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)の主な点は次のとおり。

  • 2022年4月1日以降、日本からの鉄鋼製品54品目(詳細は文書内Annex 1参照)の輸入につき、年間125万トンまで追加関税の適用を除外するTRQを導入する。
  • 除外が認められるには、日本で鋳造工程が行われたことを証明する関連書類を、輸入者が提出しなければならない。
  • 2020年1月の大統領布告9980号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで232条関税の対象に含めていた鉄鋼派生品については、追加関税の適用除外となる。
  • 申請ベースの品目別追加関税適用除外制度は従来どおり継続する。
  • 年間のTRQの枠は四半期ベースで管理し、品目ごとに先着順で配分される。品目ごとの四半期枠の利用状況などについては、追って米政府のウェブサイトで情報提供を行う。

萩生田光一・経済産業相は2月8日の談話外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、「232条関税はWTOルールに不整合となり得ると考えており、鉄鋼・アルミ二ウムへの同関税について、WTOルールに整合的なかたちでの完全解決を求めてきたところ。今般の米国の対応は、そうした解決に向けた一歩であると考えるが、米国に対しては、引き続き、完全解決を強く求めていく」としている。

鉄鋼・アルミニウム産業に関する日米共同声明(本文PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)仮訳PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))では、非市場的な過剰生産能力に対応するために、(a)貿易救済/税関協力、(b)両国間の鉄鋼・アルミ貿易のモニタリング、(c)非市場的な過剰生産能力および炭素強度に関する協調、の枠組みを実施し、これら運用などに関するレビューを毎年行うとしている。特に日本は(c)について、鉄鋼に関してより市場志向的な条件を確立するため、共同声明から6カ月以内に正式な手続きを開始することを視野に、アンチダンピング、相殺関税、セーフガード措置や少なくともそれと同等の効果を有する他の措置など、適切な国内措置を実施するとしている。また、共同声明では、鉄鋼・アルミに関するグローバルアレンジメントについて議論を開始するとしている。萩生田・経済産業相はこれについて、「米国、さらにはEUなど、志を同じくする国・地域とともに、市場歪曲(わいきょく)的措置や脱炭素化に対処し、鉄鋼・アルミニウム産業の持続的な発展に向けて、引き続き世界をリードしていく方針である」としている。

(注)232条関税の適用除外、輸入数量割当、または関税割当(TRQ)対象国・地域は次のとおり。

  • 鉄鋼の適用除外:オーストラリア、カナダ、メキシコ
  • 鉄鋼の数量割当:アルゼンチン、ブラジル、韓国
  • アルミの適用除外:オーストラリア、カナダ、メキシコ
  • アルミの数量割当:アルゼンチン
  • 鉄鋼・アルミのTRQ:EU

(磯部真一)

(米国、日本)

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