タイとマレーシアが首脳会談、貿易拡大へ国境地域開発の加速などで合意

(タイ、マレーシア)

バンコク発

2022年03月04日

タイのプラユット・チャンオーチャー首相は2月25日、タイを訪れたマレーシアのイスマイル・サブリ首相と首脳会談を行った。新型コロナウイルスの感染拡大以降、外国首脳がタイを公式訪問するのは初めて。タイ政府発表によると、両国間の貿易総額を2025年までに300億ドルに拡大する目標などで合意した。共同記者会見での要点は以下のとおり。

  • 2回目の新型コロナウイルスワクチン接種完了者を対象に、マレーシア側で「ワクチン・トラベル・レーン(VTL)」と名付けた、双方向での隔離なし旅行の再開に合意。タイは「テスト・アンド・ゴー制度」(ワクチン接種済み外国人の隔離なし入国)について、現在の空路入国だけでなく、マレーシアとの間では陸路入国も実施する。デジタル・ワクチン接種証明書の相互承認も進める。
  • サダオ(タイ側)~ブキット・カユイタム(マレーシア側)国境を結ぶ道路を整備し、タイ深南部ナラティワート県コーロク川に新たな橋を建設し、両国の貿易・投資・観光を促進する。
  • 経済の再活性化に向けて、国境貿易・トランジット貿易を拡大させる。クロスボーダーの貨物輸送や旅客の交通にかかる協力・相互支援に関する覚書について、最終化した上で、国内手続きが完了次第、署名する用意があることを相互に表明。
  • デジタル経済、バイオ・循環型・グリーン(BCG)経済モデルなど新たな協力分野を模索する。
  • マレーシア企業に対し、タイ南部国境地域(SBPs)のゴム産業やハラール産業など潜在的な開発事業への投資を呼びかける。

上記以外にも、ミャンマー情勢を踏まえたASEANの役割について意見交換したほか、2022年のAPEC議長国タイに対するマレーシアの支援に謝意が示された。

タイ商務省によると、2021年の対マレーシア輸出は前年比38.1%増の120億5,800万ドル、輸入は前年比18.5%増の120億1,800万ドルと拡大した(2022年1月26日記事参照)。また、マレーシアとの陸上国境を通じたタイの輸出は42.6%増の3,466億バーツ(約1兆2,478億円、1バーツ=約3.6円)と増大している(2022年2月15日記事参照)。

海上輸送の逼迫や、新型コロナ感染拡大に伴う輸送ルートの多様化ニーズなどから、日系企業の陸上輸送への関心は高まっている。特に規模の大きいタイ~マレーシア間のトラック輸送や鉄道輸送の進展が期待されている。

(北見創、シリンポーン・パックピンペット)

(タイ、マレーシア)

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