ウクライナ情勢が小麦、野菜、衣料品などの国内産業にも影響

(トルコ、ロシア、ウクライナ)

イスタンブール発

2022年03月11日

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻により、トルコの貿易や物流への影響に加えて(2022年3月10日記事参照)、ロシア、ウクライナ両国からの輸入依存度が高い穀物セクターへの影響も懸念されている(2022年2月24日記事参照)。2021年に小麦輸入の約87%を占めた両国からの輸入が停止したことと、小麦価格が国際市場で約14年ぶりの高値になったことで、他国からの調達コストも跳ね上がり、国内小売市場に影を落としつつある。

トルコ統計機構(TUIK)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、2月の消費者物価指数(CPI)上昇率は、政府の低金利政策や、通貨リラの下落、世界的な原料価格の上昇などを要因に、前年同月比55.4%増(食品は同64.4%増)と高騰している。小麦の国内流通量の急落は、小麦粉、パスタや菓子などの食品加工メーカーの生産に打撃を与え、輸出だけでなく、国民の食卓に欠かせないパンや小麦由来製品の価格を一段と引き上げる可能性が指摘されている。

他方、トルコからウクライナとロシア向けに輸出していたトマト、キュウリ、ピーマン、ズッキーニ、ナスなどを輸出できなくなったことで、国内の野菜価格は50%下落した(3月5日付「サバフ」紙)。

このほかの輸出産業でも影響が広がっており、衣料品セクターでは、ウクライナ侵攻前の両国からの受注のうち、約2億ドル相当分の注文がキャンセルされたという。2021年のトルコからウクライナとロシアへの衣料品、革製品、靴などの輸出は10億ドルを超えていたとされる(3月4日付ユーロニュース)。

ウクライナでの生産の代替先として、トルコのビジネスチャンスにつながるという見解がある一方で、産業界からは否定的な声も出ている。例えば、トルコ商工会議所連合会(TOBB)自動車部門委員会のアルペル・カンジャ委員長は、欧州の自動車メーカー向けの自動車用ワイヤーハーネスなどの部品生産がウクライナで停止したことについて、「調達先を、トルコなどの戦争地域に近い国に切り替えるような、根本的なサプライチェーンの変更はないのではないか」と冷静な見方をしている(3月7日付「デュンヤ」紙)。

(エライ・バシュ)

(トルコ、ロシア、ウクライナ)

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