トルコ経済界もウクライナ情勢を懸念

(トルコ、ウクライナ、ロシア)

イスタンブール発

2022年02月24日

トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領は2月22日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」(いずれも自称)の独立を承認したことに対して、「ロシアの決定は容認しがたい」との見解を表明した。「ウクライナでの戦争は、黒海地域全体の不安定化につながるもので、黒海地域に属する国としてわれわれは必要な対策を講じる」と述べ、両国に国際的なルールに従うよう呼びかけた。

ウクライナ情勢が緊迫する中、トルコの経済界では、国内経済への悪影響を懸念する声が出始めている。貿易において、穀類はロシアとウクライナからの輸入がトルコ全体の63.9%(2020年)を占めており、鉄鋼も24.8%と、その依存度は極めて高い。また、天然ガスは輸入全体の約3割をロシアに依存しており、一連の資源価格の大幅上昇は、すでに50%近い高水準にあるトルコのインフレ率(2022年2月16日記事参照)に追い打ちをかけると懸念されている。

また、両国では、トルコの建設コントラクターが多岐にわたるインフラプロジェクトに参入している。近年のウクライナにおける案件だけをみても、ドウシュ建設が橋、オヌル建設が空港改修、リマク建設が地下鉄建設の案件を落札している。

生産投資においては、トルコのビール醸造最大手のアナドル・エフェスが、ベルギーに拠点を置くアンハイザー・ブッシュ・インベブとの合弁企業(ABインベブ・エフェス)で、両国へ進出・生産(ロシアに11、ウクライナに3の醸造所)している。また、ガラス関連生産のシシェジャムも、両国(ロシアに5、ウクライナに1の工場)で生産を行っている。このように、トルコ企業の両国への投資には共通するセクターも多い。

加えて、地域の不安定化は、トルコからの物流にも悪影響をもたらすとみられている。国際輸送ロジスティック・サービス協会(UTİKAD)の推計によると、40~50%のコスト増につながる可能性があるという。

同様に、トルコにとって重要な外貨収入源である観光部門でも、両国からの観光客数は合計で23%(2021年)を占めるとされる。2015年に起きたシリアでのトルコ軍によるロシア戦闘機撃墜事件で、両国関係が悪化した際、ロシアからの観光客が途絶え、トルコの経常収支悪化につながったことは記憶に新しい。既に両国の状況悪化は、トルコの観光部門に対して100億ドル相当の損失につながるとの試算もある。

トルコ政府はこういった事態を避けるため、NATOの枠内にとどまらず、独自のスタンスで両国の仲介を試みている。他方でトルコとしては、ロシア、ウクライナ双方との友好関係を維持しているものの、ウクライナの主権および領土一体性への支持、ウクライナへのドローン輸出や生産進出計画などではロシアと相いれない面もあり、微妙な状況だ。

(中島敏博、エライ・バシュ)

(トルコ、ウクライナ、ロシア)

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