米エネルギー情報局、2050年までのエネルギー展望を公表

(米国)

シカゴ発

2022年03月10日

米国エネルギー情報局は3月3日、2022年版年次エネルギー見通し(Annual Energy Outlook 2022外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を公表した。この見通しは、2021年11月時点での政策をベースに、経済モデルを用いた政策中立的な分析を行い、2050年までの米国の長期エネルギー動向に関するシナリオを示している。同月に成立した超党派のインフラ投資計画法案(2021年11月9日記事参照)による政府の財政支出増加の影響は織り込まれたものの、2050年の炭素中立目標達成のための具体的な規制や投資の多くは、2021年11月時点で最終決定に至っていなかったため、今回のシナリオには反映されていない。

米国では、2050年に向けて人口増加や経済成長がエネルギー効率の改善を上回り、2050年時点の国内エネルギー消費量が、熱量ベースで2021年比12%増加することを、基準シナリオとしている。米国における1次エネルギー源別の割合をみると、2021年時点では化石燃料が8割弱(79.8%)と最大のシェアを占めている(添付資料表参照)。化石燃料の割合は2050 年には 75%を下回るが、その主因は石炭の低下で、石油や天然ガスはわずかながら増加するとの見方が示されている。一方で、再生可能エネルギーの割合は2021年の12%から2050年には20%に拡大すると見込まれるが、これは、政策インセンティブや技術進歩によるコスト低下によって、風力や太陽光などの消費量が今後30年間で2倍以上に増加するとのシナリオに基づくものだ。原子力については、現時点とほぼ変わらない6%程度を維持すると見込んでいる。

他方、エネルギーの供給面においては、米国産原油の生産量が増加し、過去最大だった2019年の水準を2023年には回復するとともに、以後、記録的な高水準を維持すると見込んでいる。国際的に割安な米国産天然ガス価格と、世界的な天然ガス需要の拡大により、米国の液化天然ガスの輸出能力の成長が継続するとの見方を示しており、これによって国内天然ガス生産量も拡大していくシナリオを示している。

バイデン政権は、2030年における温室効果ガスを2005年比で50~52%削減する目標を掲げているが(2021年4月23日記事参照)、基準シナリオにおける2030年の二酸化炭素(CO2)排出量は46億トンと見込まれており、2005年比では23%減にとどまる。2050年のCO2排出量も47億トンにとどまるとのシナリオが示されており、米国全体での2050年排出量ネットゼロ目標の達成(注)のためには、具体的な政策の実現による排出量自体の削減とともに、大規模なカーボンオフセット事業の実現が必須とみられる。

(注)米国シンクタンクによるカーボンニュートラルに向けた動きに関する世論調査によると、2050年までのカーボンニュートラル達成を全米の成人の大多数が支持しているという結果だった(2022年3月4日記事参照)。

(上村真)

(米国)

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