ヘルツォーク大統領がトルコを訪問、関係改善に向けて対話

(イスラエル、トルコ、ウクライナ)

テルアビブ発

2022年03月14日

イスラエルのアイザック・ヘルツォーク大統領がトルコの首都アンカラを訪問し、3月9日にレジェップ・タイップ・エルドアン大統領と会談したと各種報道が報じた。

同日付「タイムズ・オブ・イスラエル」紙によれば、両大統領はウクライナ情勢や東地中海情勢などについて議論したとされる。エルドアン大統領は「(ヘルツォーク大統領の)歴史的な訪問は、トルコとイスラエルの関係の転換点になるだろう」としたうえで、「これからの時期は、2国間および地域間の協力関係に新しい機会をもたらすだろう」と述べたという。

トルコとイスラエルはこれまで、トルコによるイスラエルの一連のパレスチナ政策への批判に加えて、2010年にガザ沖で起こったトルコからガザに向かう人道援助船をイスラエル国防軍が攻撃した事件、さらには2018年の米国大使館のエルサレム移転をめぐってエルドアン大統領がイスラエルを強く非難し、同国大使の召還に発展した事件など、対立してきた経緯がある(2021年12月10日記事参照)。そのため、今回のヘルツォーク大統領のトルコ訪問によって、外交関係を中心とした公的な2国間関係が修復されることが期待されている。

他方で、両国間の経済関係については、これまでの外交的な対立にもかかわらず、常に活況だった。トルコからイスラエルへの財の輸入をみると、2008年以降おおむね右肩上がりで増加している。また、イスラエルからトルコへの輸出についても、増減はあるものの一定水準を保っているなど(添付資料図参照)、「政冷経熱」の状態だったといえる。

また、ウクライナ情勢に関連して、欧州へのロシア産天然ガス供給の代替として、イスラエルを含む東地中海産の天然ガスを供給する可能性が指摘され始めている(「エルサレム・ポスト」紙2月27日)。前述の「タイムズ・オブ・イスラエル」紙でも、トルコが同地域で推進しようとしているガス探査について、会談で話し合われたとされている。

他方で、東地中海ガス田から欧州にガスを供給するパイプライン計画は、イスラエルがこれまでギリシャやキプロスなどとともに、トルコを除くかたちで進めてきた経緯がある。また、米国がこの計画に対する支援方針を見直すと発表したこと(2022年1月24日記事参照)もあり、今回のトルコとイスラエルの外交関係の修復が今後どのように影響するのかについては、引き続き注視が必要だ。

(吉田暢)

(イスラエル、トルコ、ウクライナ)

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