ハーベック経済相、NRW州で送電網拡充や鉄鋼生産時の水素利用を視察

(ドイツ)

デュッセルドルフ発

2022年03月03日

ドイツのロベルト・ハーベック経済・気候保護相は2月21、22日に西部のノルトライン・ウェストファーレン(NRW)州を訪問した。2022年夏までにドイツの全16州を訪問し、気候変動やエネルギー、産業構造転換などについて意見を交わすと表明しており、今回のNRW州訪問はハンブルク市(州に相当)、バイエルン州(2022年2月1日記事参照)、メクレンブルク=フォアポンメルン州に続くもの。

ハーベック経済相は、ヘンドリック・ブスト州首相やアンドレアス・ピンクバルト州経済・イノベーション・デジタル化・エネルギー相と会談したほか、連邦カルテル庁と連邦ネットワーク庁を訪問。鉄鋼大手のティッセンクルップ、モーションセンサーや統合駆動技術の分野で国際的に活躍する中堅企業のレノルドプラスバウアーを視察した。

ドイツでは、エネルギー転換を成功させ、再生可能エネルギーによる電力を安定的かつ安価に供給するため、風力・太陽光発電所の増設だけでなく、送電網の整備・拡充が求められている。このため、ハーベック経済相はネットワーク庁では送電網の拡充の進捗状況を確認した。同庁によると現在、101件、約1万2,300キロメートルの拡張プロジェクトが計画されている。そのうち完了は22件(1,900キロ)、許可取得済みは6件(700キロ)、許可取得中は54件(7,100キロ)、申請未提出は19件(2,600キロ)だった。カルテル庁ではエネルギーや消費者保護、持続可能性、デジタル経済などの分野の競争政策に関連して意見交換を行った。

デュイスブルク市にあるティッセンクルップでは、グリーン鉄鋼の生産や同社の脱炭素化に向けた転換計画について情報交換した。また、政府が支援を決定している水素を利用する直接還元設備(2021年11月25日記事参照)の建設予定地も視察。鉄鋼生産でグリーン水素(注1)の活用は脱炭素化を図る上で非常に効果的で、水素1トンで二酸化炭素(CO2)排出を26トン削減できるとされる。政府は2030年の水素の国内需要を90~110テラワット時(TWh)と予測し、国内生産と輸入で賄うとしている。同社は水素を利用する直接還元への転換で約10TWhのグリーン水素が必要となると見込んでいる。

さらに、レノルドプラスバウアー訪問は、同社製品が鉄道やEモビリティー(注2)、風力発電などの分野で利用されていることから、気候中立達成に貢献するNRW州の中堅企業の活動状況を確認するために行われた。

(注1)再生可能エネルギー由来の電力を利用して、水を電気分解して生成される水素。製造過程でCO2を排出しない。

(注2)電気を動力とする移動手段もしくは自動車のこと。

(ベアナデット・マイヤー、作山直樹)

(ドイツ)

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