政府が鉄鋼生産時の水素活用に3,700万ユーロ助成

(ドイツ)

デュッセルドルフ発

2021年11月25日

ドイツ経済・エネルギー省は11月15日、欧州最大の鉄鋼の生産地である西部ノルトライン・ウェストファーレン(NRW)州デュイスブルク市における鉄鋼生産に水素を使用するプロジェクト「H2Stahl外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」に対し、約3,700万ユーロを助成すると発表(同省プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。H2Stahlは鉄鋼生産工程の二酸化炭素(CO2)排出量を削減し、気候保護に貢献することを目的としている。

同プロジェクトでは、ドイツ鉄鋼大手ティッセンクルップ・スチール・ヨーロッパとフランス産業ガス大手エアリキード傘下のエアリキード・ドイツなど3社がプロジェクトパートナーとして鉄鋼生産での水素活用を目指す。ティッセンクルップ・スチール・ヨーロッパのデュイスブルク市のプラントで今後5年間、高炉で銑鉄を作る際に水素活用を検証する。鉄鋼生産の全ての工程に必要になる十分なグリーン水素(注)の供給ができなくとも、一部の工程で水素を活用することで、中期的にはCO2排出量を最大20%削減できると見込んでいる。将来的には炭素を含まないカーボンフリーの鉄鋼生産を実現することを目指し、さらなる検証を行う予定だ。また、現場で十分な水素を確保するため、パイプラインの整備などインフラを拡張している。なお、エアリキード・ドイツはNRW州でグリーン水素製造用の電解槽の建設も進めている(2021年8月10日記事参照)。

ドイツの工業分野全体のCO2排出量のうち鉄鋼業界は約30%を占めているとされ、同業界のCO2排出量削減への期待は大きい。一方、現在の高炉は既に効率性が非常に高く、従来の炭素を含む還元剤を使用する場合はCO2排出量の削減はできない。そのため、カーボンフリーな還元剤としてグリーン水素を使用することが注目されている。

ペーター・アルトマイヤー経済・エネルギー相は「水素はグリーン鉄鋼および鉄鋼業界の持続可能な転換を成功させるカギとなる。H2Stahlのようなプロジェクトは、ドイツの鉄鋼業界を環境に優しいものにするだけでなく、将来的な競争力維持に貢献する」とした。

なお、NRW州は2019年にティッセンクルップ・スチール・ヨーロッパの高炉における水素利用のパイロットプロジェクトに160万ユーロを支援しており、今回のプロジェクトはそれを基に実施される。

(注)再生可能エネルギー由来の電力を利用して、水を電気分解して生成される水素。製造過程でCO2を排出しない。

(ベアナデット・マイヤー、作山直樹)

(ドイツ)

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