加ライ・サイクル、米オハイオ州GM合弁バッテリー工場内のリサイクル施設を運営へ

(米国、カナダ)

ニューヨーク発

2022年02月01日

北米最大級のバッテリーリサイクル会社ライ・サイクル(Li-Cycle、本社:カナダ・オンタリオ)は1月27日、米国の自動車メーカー大手ゼネラルモーターズ(GM)と韓国のバッテリーメーカー大手LGエナジーソリューションの合弁会社アルティウムセルズ(注)と提携し、オハイオ州ウォレンに建設中の電気自動車(EV)用バッテリー工場内のリサイクル施設を運営することを発表した。アルティウムセルズが施設を建設し、ライ・サイクルが機器やテクノロジーを導入してリサイクル業務を行う。これによりGMは、製造過程で発生したスクラップに含まれるコバルト、ニッケル、リチウム、グラファイト、銅、マンガン、アルミニウムといった原材料の約95%を再利用することが可能となる。施設は、2023年初頭に稼働を予定している。

GMは、2019年12月に設立したアルティウムセルズを通して、EV用バッテリーの内製化を積極的に進めている。2022年8月にオハイオ州、2023年後半にテネシー州で新工場が稼働の予定となっている(2021年4月19日記事参照)。さらに最近では、ミシガン州ランシングでの新工場建設に向け投資計画が発表されたばかりだ(2022年2月1日記事参照)。EV化が進むにつれ、バッテリー原材料の確保が課題となる中で、製造過程で発生するスクラップは重要な資源として注目されている。アルティウムセルズのオハイオ工場ディレクターのケビン・ケア氏は「(今回の)新たな施設は、サステイナビリティに向けた取り組みにおけるもう1つの大胆な前進だ」と期待を寄せる(ライ・サイクル記者発表1月27日)。

ライ・サイクルは、米国ではニューヨーク州で既に事業を展開しており、今回のオハイオ州での新施設を含め2023年にかけて新たに4施設の稼働が予定されている。リサイクルの過程で鉱物を取り出す方法には、主に細断したバッテリーセルを燃焼させて抽出する従来式の「乾式製錬」と、化学的処理による「湿式製錬」の2通りがあるが、同社では後者を採用。「湿式製錬」は「乾式製錬」に比べて温室効果ガス排出量が30%低く、環境への影響を最小限に抑えるといった利点がある。GMは、2040年までに全社でのカーボンニュートラル達成を目指しており、リサイクル工程での排出量削減も重要な課題である。

新たなリサイクル施設が完成すれば、年間最大1万5,000トンのスクラップと電池材料の処理が可能となる。また将来的には、ライ・サイクルが最新のEVバッテリー技術をより理解し、使用済みバッテリーのリサイクルにまで広く事業を展開することも期待される。

(注)アルティウムセルズは1月25日、米国ミシガン州における電気自動車(EV)や自動運転車の製造などに関連し、2025年までに70億ドルを投資し、5,000人規模の新規雇用を行うと発表した(2022年2月1日記事参照)。

(大原典子)

(米国、カナダ)

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