EU、リトアニアに対する中国の輸入制限でWTO紛争解決手続き開始

(EU、中国、リトアニア)

ブリュッセル発

2022年01月28日

欧州委員会は1月27日、リトアニアとEUに対する中国の輸入禁止・制限に関して、WTO紛争解決手続きに基づく協議の申し立てを中国に対して行ったと発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。EUの申し立てによると、2021年第4四半期(10~12月)ごろから、リトアニア産品が中国税関で止められる事例や、リトアニアからの輸入許可申請が中国に却下される事例、中国に輸出するEU企業がサプライチェーンからリトアニア産の部品を排除するよう圧力を受ける事例が発生しており、中国による、リトアニア産品や、リトアニアと関係のあるEU産品に対するこうした差別的取り扱いはWTOルールに違反しているとした。

2021年8月にリトアニアが台湾に対して首都ビリニュスの代表処開設を許可して以降、中国とリトアニアの関係が悪化している(2022年1月6日記事参照)。欧州委は12月に、域外国が貿易の制限によりEUや加盟国に対して地政学的な政策を変更するよう圧力をかけた場合に、迅速な対抗措置の実施を可能にする反威圧手段規則案を発表した際にも、リトアニアに対する中国の輸入制限には地政学的な意図があり、経済的威圧になり得ると示唆していた(2021年12月10日記事参照)。

WTO紛争解決手続き開始も、解決に向けた道筋は不透明

欧州委のバルディス・ドムブロフスキス執行副委員長(通商担当)は、今後も解決に向けた外交努力を続ける一方で、中国との直接交渉に進捗がないことから、WTO紛争解決手続きを開始する以外に道はないと説明。この問題はEU単一市場の一体性を脅かしているとして、加盟国と結束して迅速に対応する用意があると強調した。

しかし、反威圧手段規則案は審議が開始されたばかりなことから適用することはできず、WTO紛争解決手続きも実効性が損なわれているのが現状だ。今回、WTO紛争解決手続きに基づく協議の申し立てが行われたことで、EUは中国との協議を公式に開始するとみられる。協議の要請から60日以内に紛争が解決されない場合には、申立国は一審に当たる小委員会(パネル)に付託する。パネルの段階で未解決の場合には、上訴審の上級委員会に上訴することになるが、上級委員会は現在、実質的にその機能を停止しており(2019年12月12日記事参照)、上級委員会での解決は困難とみられる。ただし、機能停止中の上級委員会に付託された場合には、欧州委は上級委の承認なしに一方的な対抗措置を取ることが可能だ(2021年2月16日記事参照)。また、EUと中国はともに上級委員会の代替プロセスとして設立された暫定的な多国間上訴制度(MPIA、2020年5月1日記事参照)に参加していることから、WTO紛争解決手続きの行方次第では、MPIAを通じた解決の可能性も残されている。

(吉沼啓介)

(EU、中国、リトアニア)

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