2021年の年間インフレ率は7.36%、2000年以来の高水準に

(メキシコ)

メキシコ発

2022年01月12日

メキシコ国立統計地理情報院(INEGI)は1月7日、2021年12月の消費者物価上昇(インフレ)率が前年同月比7.36%(2021年の年間インフレ率と同義)だったと発表した。インフレ率は、「新型コロナ禍」により世界的に生じたサプライチェーンのボトルネックや、原油価格の高騰による輸送費などの上昇、在宅時間の増大による財への需要増などが影響して、2020年後半から徐々に上昇傾向となり、2021年3月以降は年間ベースのインフレ率が中央銀行の目標上限(4%)を上回る水準にあった。2021年11月に年間ベースのインフレ率が7.37%に達した(2021年12月13日記事参照)ため、2021年12月には8%に近い水準になると予測されていたが、前月をわずかに下回る7.36%にとどまった。予測を下回ったとはいえ、年間のインフレ率は2000年の8.96%に次ぐ高水準となった(添付資料表参照)。

2021年12月のコアインフレ率(注)は、前年同月比5.94%で前月から0.8ポイント上昇した。内訳をみると、最大の押し上げ要因は引き続き「財」で前年同月比7.40%、そのうち「食品・飲料・たばこ」が8.11%と最も高く、次いで「食品を除く財」が6.61%だった。新型コロナ禍により2020年4月から2021年5月まではおおむね2%台で推移していた「サービス」も、飲食店などの営業規制が緩和され経済活動が活性化されたことにより4.30%まで上昇した。一方、非コアインフレ率は、「畜産品・野菜・果実」(15.78%)、「エネルギー」(11.50%)が押し上げて、11.74%と高水準ではあるものの、前月より0.9ポイント低下した。メキシコ中銀の金融政策決定会議の理事であるジョナサン・ヒース氏は、自身のツイッターで「コアインフレ率が上昇を続けて5.94%に達したことは良いニュースとはいえない。構造的ともいえる問題が残っていることを示すからだ」とし、インフレが収束傾向に入るとの見方を否定した。

大統領はインフレの抑制を犯罪撲滅と並ぶ政府の最重要課題と認識

アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領は2022年1月6日の早朝記者会見で、「インフレ高進は世界的現象」で、「新型コロナ禍による外的な要因に起こったものであるため、一時的なものと見込んでいる」としながらも、「インフレの抑制は殺人などの犯罪撲滅と同様、政府の懸念事項で最重要課題だ」とコメントし、就任当初から第1の課題として挙げてきた治安と同等に取り組むべき課題と位置付けた。また、インフレによって国民の購買力が低下することがないように、2022年の最低賃金が前年比で22%引き上げられている(2021年12月10日記事参照)とし、「新自由主義(ネオリベラリズム)を重視したこれまでの政権下では、最低賃金の上昇率は常にインフレ率を下回っていた」とコメントした上で、現時点では「インフレによる国民生活の悪化は見られない」とした。

(注)天候などにより価格変動が大きい農産品やエネルギー価格、政府の方針で決定される公共料金を除いた価格の指数。

(松本杏奈)

(メキシコ)

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