11月のインフレ率、過去20年間で最高の年率7.37%に

(メキシコ)

メキシコ発

2021年12月13日

メキシコ国立統計地理情報院(INEGI)の12月9日の発表によると、2021年11月の消費者物価上昇率(インフレ率)は前月比で1.14%、前年同月比(年率)で7.37%に達した。年率では2001年1月(8.11%)以来の高水準となる(添付資料図1参照)。2021年の1月から11月までの累計では6.97%に達しており、2021年通年のインフレ率は8%近くに達する見通し。

11月の年率の物価上昇率をコア物価(注)と非コア物価に分けて見ると、コアが5.67%、非コアが12.61%に達しており、コアインフレ率が2001年11月以来、非コアインフレ率が2017年12月以来の水準となる。コアインフレ率は財が7.24%、サービスが3.92%、非コアインフレ率は農牧産品が14.36%、燃料・公共料金が11.26%に達している。

国際価格の上昇が農作物の国内生産コストにも影響

過去2年間のコアインフレ率の推移を見ると、2020年3月以降、新型コロナウイルス禍で外出や旅行が控えられて需要が低迷したため、宅配やインターネット販売の需要が影響して、食品などの財(商品)の価格が上昇したものの、サービス価格は低い水準にとどまっていた。しかし、2021年に入り、新型コロナ感染が落ち着くのに伴い、財に加えてサービスの価格も上昇傾向にある(添付資料図2参照)。

他方、非コアインフレ率の推移をみると、2021年4月以降、農牧産品の価格が急速に上昇している。この背景には天候要因もあるが、燃料費や輸送コスト、肥料・農薬などの国際価格の上昇により、国内の農業生産コストが上昇していることが指摘されている。また、メキシコは畜産業で用いる小麦や大豆、トウモロコシなどの穀物の多くを輸入に依存しているため、鶏肉や牛肉など食肉価格の上昇には、穀物の国際価格上昇が影響している。

ガソリンなどの燃料価格は、2020年前半のパンデミック下での原油価格急落の反動で、2021年前半に急上昇したが、11月時点でも年率10%を超える水準で高止まりしている。アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領は、ガソリンやディーゼル、液化石油ガス(LPG)の小売価格に補助金を適用しており、同価格の上昇を一般的なインフレ率以下に抑えると公約してきたが、実際には抑えきれていないのが現状だ。INEGIのデータによると、11月時点のレギュラーガソリン国内平均販売価格は前年同月比14.0%も上昇しており、LPGも同25.1%増と高騰している。

(注)天候などにより価格変動が大きい農産品やエネルギー価格、政府の方針で決定される公共料金を除いた価格の指数。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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