2022年の最低賃金は前年比22%上昇、経済界も合意

(メキシコ)

メキシコ発

2021年12月10日

メキシコの国家最低賃金委員会(CONASAMI)は12月8日、連邦官報で2022年1月1日以降の最低賃金を公示した。メキシコの最低賃金は、一般最低賃金と北部国境地帯最低賃金に大別される。最低賃金の上昇率は、憲法が定める理念を満たすための購買力回復に向けた上昇分(Monto Independiente de Recuperación:MIR)とインフレ考慮分で構成される。CONASAMIによると、一般最低賃金は現状の日給141.70ペソ(約765円、1ペソ=約5.4円)から172.87ペソへと、31.17ペソ(16.90ペソのMIRと、9%のインフレ考慮分の合計)引き上げられた(添付資料表参照)。また、北部国境地帯最低賃金は、現状の213.39ペソから260.34ペソとなり、46.95ペソ(25.45ペソのMIRと、9%のインフレ考慮分の合計)の引き上げとなる。

経済界も22%の引き上げに合意

今回の最低賃金の引き上げには、経済界も合意している。最低賃金の引き上げは、政府、経営者、労働組合の代表が協議した上で決定されるが、経営者の代表であるメキシコ経営者連合会(COPARMEX)は2021年11月28日、2022年の一般最低賃金を170.04~172.87ペソの間に引き上げることを提案していた。政労使の間で12月1日に合意された2022年の最低賃金は、上記提案の上限に相当する。

経営者側が最低賃金の引き上げに賛成している背景には、そもそも最低賃金の水準が憲法の定める理念とかけ離れていることがある。憲法123条は、最低賃金を「一家の長が日常の必要性を満たし、子女の義務的教育を与えるのに十分であるべきもの」と定義している。しかし、長年のインフレ率程度の引き上げの結果、最低賃金の水準が憲法の理念を達成するには不十分な水準になってしまったため、最低賃金を本来あるべき水準に戻し、国民の購買力と生活水準の向上を促すべきだと経済界も認識している。

なお、ジェトロの投資コスト比較調査によると、2021年1月時点の工場の一般ワーカー(オペレーターレベル)の月額賃金(基本給)は、5,360~7,620ペソで、現行最低賃金月額(4,308ペソ)の1.24倍~1.77倍に相当する。したがって、22%の上昇率であれば、各職場の労使交渉で賃上げ率が決定される最低賃金以上の正規労働者の賃上げには直接的には影響はしない。なお、インフレ考慮分として9%が設定されているが、2021年11月末時点の年間インフレ率が7.37%、中央銀行が12月1日に発表した内外35の民間シンクタンクの年末時点のインフレ見通し平均値が7.20%であることを考慮すると、少し引き上げ率が高すぎるという見方もある。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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