世界銀行と国連、世界経済見通しをそれぞれ発表、回復基調の陰りに警鐘

(世界)

国際経済課

2022年01月14日

世界銀行は1月11日に「世界経済見通し」〔プレスリリース(英語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます日本語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)〕を、国連経済社会局(UN DESA)は13日に「世界経済状況・予測」の2022年報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを相次いで発表した。2021年の世界の経済成長率(実質GDP伸び率)は、前年のマイナス成長からの反動で記録的な高水準となったが、2022年は失速が見込まれるとする。新型コロナウイルスの新たな変異株の拡散やサプライチェーンの混乱、インフレ圧力の高まりを含むさまざまなリスクが背景にある。2022年の世界経済成長率は、いずれの見通しでも、前回発表時から下方修正された(添付資料表1、表2参照)。

2021年の世界の経済成長率については、世界銀行の発表では5.5%で、前回見通しから0.2ポイント下方修正したものの、多くの国のロックダウン解除による需要回復により「景気後退後では過去80年で最も高い成長率」となった(2021年6月9日記事参照)。国連の発表では、好調な消費と投資が奏功し、前回から0.1ポイント上方修正し、世銀と同様、2021年は5.5%と「1976年以降で最も高い成長率」と分析した(2021年5月12日記事参照)。国・地域別にみると、世界銀行、国連ともに、米国や中国の成長率を下方修正している。国連の報告書では、「中国、EU、米国などの大きな経済圏で、財政・金融支援策の効果消失、サプライチェーンの混乱により、2021年末にかけて失速した」と分析した。

他方、2022年と2023年の世界の経済成長率見通しについて、世界銀行はそれぞれ4.1%、3.2%、国連は4.0%、3.5%とした。両機関とも2023年にかけて経済成長は減速、回復基調は弱まるとの見通しを示し、前回発表した2022年の予測値と比較すると、世界銀行は0.2ポイント、国連は0.1ポイントとともに下方に修正した。減速の要因としては、オミクロン変異株の発生による新型コロナウイルス感染拡大、サプライチェーンの混乱の長期化、インフレ圧力、政府による財政支援の解除などを共通して挙げている。

今後のリスクとしては、先進国と新興国・途上国の成長率の差の拡大、インフレ率の上昇を指摘している。世界銀行は経済グループ間の不均衡拡大について、先進国の成長率は鈍化するものの、先進国の経済水準は2023年までに新型コロナ感染拡大前に予測した水準まで回復する一方、新興国・途上国では同水準を大幅に下回ったままと分析する。新興国・途上国では、変異株の流行が需要回復を妨げるほか、新型コロナによる打撃が大きい観光産業に依存する経済構造や、米国や中国などの主要国経済の鈍化による外需の下押し、インフレ圧力による金融政策の制限など、複合的なリスク要因を指摘している。

国連ではさらに労働市場の回復の遅れにも警鐘を鳴らす。米国や欧州などでは労働参加率が歴史的な低水準を記録しており、失業者が復職できていない状況が続く。他方で、一部の業種の人手不足が深刻化しており、サプライチェーンの混乱やインフレ圧力に拍車をかけると分析する。

(田中麻理)

(世界)

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