2021年のインフレ率は10.06%、中銀目標上限を10カ月連続上回る

(ブラジル)

米州課

2022年01月19日

ブラジル地理統計院(IBGE)は1月11日、代表的な物価指数である拡大消費者物価指数(IPCA)の2021年12月の上昇率が前月比0.73%だったと発表した。前年同月比(年間インフレ率と同義)では10.06%で、11月(10.74%)と比べるとやや減速したものの、ブラジル中央銀行が設定する年間のインフレ目標値(2.25~5.25%)の上限を10カ月連続して大幅に上回った(添付資料図参照)。年間インフレ率としては、2015年に10.67%を記録して以来6年ぶりの高水準。

前月比の上昇率を費目別にみると、最も上昇率が高かったのは衣類(2.06%)で、男性用衣類(2.53%)や女性用衣類(2.00%)の上昇などが押し上げ要因となった。次に上昇率が高かったのは家庭用品(1.37%)で、家具(2.07%)や家電製品および部品価格(1.77%)の上昇などが目立った。さらに、11月は0.04%減だった飲食料品も、果物(8.60%)や、10カ月連続で上昇し続けているコーヒー豆の販売価格(8.24%)の上昇などが影響し0.84%増加した(添付資料表1参照)。

2021年のインフレ押し上げ要因は交通・運輸、住居関連、飲食料品

前年同月比(年間インフレ率)でみると、交通・運輸の物価指数が最も上昇した(21.03%)。交通・運輸は物価指数全体に占めるウエートが比較的高く、物価上昇率全体(10.06%)への寄与度も最も高かった(4.19ポイント)。次いで住居関連(13.05%、注1)、飲食料品(7.94%)と続く(添付資料表2参照)。前述の3費目だけで寄与度の約79%を占める。つまり、2021年のインフレの8割はこの3費目の上昇で引き起こされたということになる。

交通・運輸を押し上げた主な要因は、国際的な原油価格の高騰を受けたガソリン(47.49%)やエタノール(62.23%)など燃料価格の上昇(49.02%)だ。新車(16.16%)や中古車(15.05%)の販売価格、航空券価格(17.59%)も影響した。

住居関連は、降雨量不足による干ばつの影響を受けた電気代金の上昇(21.21%)などが押し上げ要因となった。ブラジルでは現在、電気代の追加料金は水力発電所のダム貯水量や火力発電所の稼働率を基に算定している。追加料金は「緑」(追加料金はなし)、「黄」〔100キロワット時(kWh)当たり1.34レアル(約27円、1レアル=約20円)〕、「赤1」(4.16レアル/100kWh)、「赤2」(6.24レアル/100kWh)の4段階の色で示される。しかし、降雨量不足によるダム貯水量不足の影響で、「赤2」は2021年7月に追加料金が9.49レアルに引き上げられ、その後も貯水量不足が続いたことで9月には「水不足」という新たな段階が設置され、14.20レアルに引き上げられた(注2)。

飲食料品は、コーヒーの販売価格の上昇(50.24%)や、タピオカでん粉の原料となるキャッサバ(48.08%)、精糖(47.87%)の価格上昇などが影響した。

なお、ブラジル中央銀行は2021年12月7、8日に金融政策委員会(Copom)を開催し、予想以上にインフレが進んでいることを理由に、政策金利(Selic)を7.75%から9.25%に引き上げている(2021年12月24日記事参照)。2021年12月のCopom開催後のプレスリリースをみると、2022年2月1、2日に予定している次回Copomでの追加利上げも示唆されており、引き続き注目していきたい。

(注1)光熱水道費・家賃など。

(注2)「赤2」の14.20レアルの追加料金の値下げは、雨期の終わる2022年3~4月まで適用される予定。

(高氏朋佳)

(ブラジル)

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