インド・ロシア首脳会談、経済・防衛など各分野での2国間協力に合意

(インド、ロシア)

ニューデリー発

2021年12月13日

インドのナレンドラ・モディ首相は12月6日、訪印したロシアのウラジーミル・プーチン大統領と会談を行い、経済や防衛を含む幅広い分野での協力をうたった共同声明「平和・進歩・繁栄に向けたパートナーシップ」を発表した。経済分野では、両国間の貿易額を2025年までに現在の3倍以上となる300億ドルにまで拡大することや、貨物通関の合理化を図るために認定事業者(AEO)制度の相互認証に向けた協議を開始すること、両国の投資家保護を目的とした2国間投資協定の早期合意を目指すことなどが盛り込まれた。

また、首脳会議に合わせ、両国の外務・防衛両相が参加する閣僚協議「2+2」が初めて開かれたほか、2国間で計28件の協定・覚書(MOU)が締結された。このうち、政府間協定9件には、1994年以降続けてきた軍事技術協力を2031年までの今後10年間にわたって継続するものや、平和利用を目的とした宇宙開発研究の協力における技術保護と関連インフラの建設・運営にかかるものが含まれている。なお、印ロ首脳会談後の記者会見で、インド政府は2018年に購入契約を締結したロシア製の地対空ミサイル防衛システムS-400の供給が2021年12月から始まったことや、自動小銃カラシニコフAK-203のインド国内での共同生産で合意に至ったことも明らかにした。

両国の協力関係の歴史は、インドと旧ソ連が1971年に締結したインド・ソ連平和友好協力条約にまでさかのぼる。同条約は、冷戦下において非同盟主義を貫いていたインドが、隣国パキスタンとの対立を背景に、旧ソ連との間で第三国からの攻撃や脅威に対して相互協議を行うことに合意したものだ。それ以降、インド政府は50年間にわたり、軍事面での技術協力を中心にロシアとの関係を構築してきた。

一方で、2020年6月に国境係争地帯で中国と軍事衝突をしたインドは、日本、米国、オーストラリアとともに「自由で開かれたインド太平洋」の実現を掲げるクアッド(Quad)の枠組みに現在参加しており、2021年9月28日には首脳会議にも出席した(2021年9月28日記事参照)。ただ、インド政府は独自の外交路線を維持しており、非同盟主義の立場を変えていない。

米国は安全保障の一環として、2017年8月に米国内で成立した「敵対者に対する制裁措置法(CAATSA)」を基に、「敵対者」に指定したロシアなどから武器調達などを行う国には制裁を科すとしている。実際にロシア製の地対空ミサイル防衛システムS-400を配備したトルコに対して、米国は2020年12月に制裁を発動した(2020年12月23日記事参照)。他方、クアッドの枠組みを重視する米国が、インドにも同様の制裁を今後発動するかどうかは不透明とされている。

(広木拓)

(インド、ロシア)

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