中銀が政策金利を0.5ポイント引き上げ5.5%に

(メキシコ)

メキシコ発

2021年12月23日

メキシコ中央銀行は12月16日、政策金利を0.50ポイント引き上げ5.50%とすると発表した。6月24日の政策金利決定会合(2021年6月30日付記事参照)から5回連続の利上げとなるが、過去4回は0.25ポイントの引き上げで、0.50ポイントの利上げは2017年2月以来となる。政策金利決定会合の理事5人全員が利上げに賛成したが、ヘラルド・エスキベル氏だけが利上げ幅を0.25ポイントにとどめるよう主張していた。

中銀はプレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で、これまでと同様に「生産活動におけるボトルネックの存在、消費刺激策、財の消費への偏向、食料やエネルギー価格の上昇、サービス産業の活動再開などにより、世界的にインフレは上昇傾向にある」としたが、新型コロナウイルス危機が与えたインパクトについては、従来の「一時的」との記載を削除した。

また、利上げ決定は「インフレ率に与えたショックの規模と多様性」を考慮し、「価格形成プロセスへのリスクが伝染し、世界的に金融引き締め政策における課題が増している」状況を評価した結果だと説明している。中銀によるインフレ率見通しも引き上げられ、2021年第4四半期時点の年率ベースのインフレ率(注)見通しは前回発表(11月11日)から0.3ポイント増加の7.1%、2022年第1四半期時点の年率ベースのインフレ率見通しも0.4ポイント増加の6.7%へと上方修正しており、インフレ上昇圧力が強まるとみている(添付資料参照)。

なお、今回の決定会合を最後に、アレハンドロ・ディアス・デ・レオン中銀総裁は2021年12月末をもって退任する。2022年1月からビクトリア・ロドリゲス・セハ大蔵公債省歳出担当次官が総裁に就任すること(2021年11月30日記事参照)が、2021年12月2日に上院で承認されており、インフレ上昇の長期化が懸念される中での総裁交代となる。

民間は2021年インフレ率を7.63%と見込む

中銀が12月17日に発表した内外37の民間シンクタンクに対して実施したアンケートでは、2021年通年のインフレ率の予想(各回答の平均値)が、7.63%となり、11月アンケート実施時から0.38ポイント上昇した。コアインフレ率についても、5.64%(前回比0.14ポイント増)を見込んでいる。2022年のインフレ率見通しも平均で4.22%となり、中銀のターゲットである3±1%の幅に収まらないとみている。

同アンケートの2021年GDP成長率予測値は、平均で5.59%で、11月実施時より0.06ポイント低下している。経済成長の阻害要因として挙げられたのは、「国内政策の不確実性」(15%)、「治安の問題」(14%)、「国内のインフレ上昇圧力」(12%)、「法的不確実性」(9%)だった。「国内のインフレ上昇圧力」については、2021年8月のアンケート実施時には全体の4%に過ぎなかったが、9月には8%、11月には9%と増大している。

(注)当該四半期(3カ月)間の月間消費者物価指数(見通し含む)を平均し、前年同期のそれと比べた上昇率。当該四半期時期における年率ベースの物価上昇(インフレ)率のこと。

(松本杏奈)

(メキシコ)

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