中銀が0.25ポイント利上げ、年間インフレ率6%超で警戒が強まる

(メキシコ)

メキシコ発

2021年06月30日

メキシコ中央銀行は6月24日、政策金利を0.25ポイント引き上げ4.25%とすることを発表した。国立地理統計情報院(INEGI)が同日に発表した6月前半(1~15日)の消費者物価指数が前年同期比(年間インフレ率)6.02%上昇し、5月の5.89%(2021年6月24日記事参照)からさらに上昇したことから警戒を強めたかたちだ。6月24日の金融政策決定会合では、5人の理事のうち、3人が利上げに賛成、2人が反対票を投じている。

中銀は同日付のプレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)において、米国の5月の年間インフレ率が5%に達したことに触れた上で、「新型コロナウイルスの感染拡大はサプライチェーンや生産活動、サービス業の操業に影響を与え続けており、メキシコの6月前半の年間インフレ率は6.02%、コアインフレ(注)では4.58%に達した。インフレ期待(予想)はコア、非コアともに再び上昇しており、(2022年以降も含めた)中長期の年間インフレ率予測も中銀目標の3%を超える水準が継続している」とインフレ圧力の上昇に懸念を示し、利上げの理由について「新型コロナウイルスの感染拡大が物価上昇に与えるインパクトは一時的なものだとしても、その規模の大きさ、さまざまな面に広く影響する性質から価格形成プロセスにとってリスクとなり得る」と説明した。

中銀は6月2日に発表した四半期レポートPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で、2021年第1四半期に原油価格の回復によってエネルギー価格が上昇し、非コアインフレが伸長していることや、コアインフレが上昇傾向にあることを指摘していたものの、2021年第3四半期の年間インフレ率予測値は4.5%で、第2四半期の予測値の5.8%から低下すると見込んでいたため、主要各紙は「サプライズ利上げ」と報じている。新型コロナウイルス用ワクチンの接種率は18歳以上の人口の33%まで進んだが、感染は再拡大の兆しをみせている。連邦政府による経済活性化のための財政出動が皆無に等しい状況下で、政策金利の引き下げのみが景気刺激策の役割を果たしていたが、2020年3月から続いた利下げも2021年2月中旬以降は止まっていた(添付資料図参照)。今回の利上げを受け、一部の専門家から政策金利の引き上げ局面に入るとの見方も出ているが、アレハンドロ・ディアス・デ・レオン中銀総裁は「今後の対応はインフレ率の推移によるため、金融政策決定会合ではあえて将来の対応については言及していない」とし、「メキシコは前例のない状況に直面している」と述べた(「エル エコノミスタ紙」6月25日)。

6月前半のインフレ率は6.02%増 市場の予想を上回る水準

INEGIの発表によると、2021年6月1~15日のインフレ率は前月同期比0.34%、前年同期比で6.02%だった。コアインフレは前年同期比4.58%で、そのうち「食品・飲料・たばこ」が5.94%と全体を押し上げた。これまで、財に比べて伸びが鈍かったサービスも3.11%と、2020年3月以来、14カ月ぶりに3%を上回った。非コアインフレでは、前年同期の原油価格低迷の反動でエネルギー価格が年間18.54%と最大の押し上げ要因になった。

(注)コアインフレは、天候などによる価格変動が大きい農産品、エネルギー価格、政府の方針で決定される公共料金を除いた指数。

(松本杏奈)

(メキシコ)

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