米議会、債務上限引き上げ法案を可決、2023年初めまでの資金繰りに対応

(米国)

ニューヨーク発

2021年12月16日

米国上下院で12月15日までに、連邦政府の債務上限引き上げに関する法案が成立した。12月16日に予定されるジョー・バイデン大統領による法案署名を経て発効する。債務上限引き上げについては、10月に一時的に4,800億ドルを引き上げる法案が成立していたが、ジャネット・イエレン財務長官が12月15日にはその資金も枯渇すると指摘し、議会に遅くとも同日までの引き上げを求めていたもので、ぎりぎりでデフォルトが回避された(2021年10月8日記事12月6日記事参照)。

議会では、前日の14日に上院(定数100)で賛成50、反対49で法案が通過した。上院での法案可決には本来60票が必要だが、この債務上限問題に限って単純過半数での議決を可能とする法案が事前に成立していたことから、与野党勢力が拮抗(きっこう)する中でも可決が可能となった。上院での可決後に、同法案は下院(定数435)に送られ、15日未明の下院での採決の結果、賛成221、反対209で可決した。今回新たに付加された債務限度は2兆5,000億ドルで、現在の債務上限の28兆9,000億ドルに追加される。上院民主党トップのチャック・シューマー院内総務(ニューヨーク州)は、2023年初めごろまでの連邦政府の資金需要に対応できる、と述べている(USAトゥデイ2021年12月15日)。

デフォルト(債務不履行)は回避されたが、次の課題はビルド・バック・ベター(BBB)法案だ。同法案は上院で現在審議されているが、財政調整措置(注)が付されており、こちらも単純過半数での議決が可能となっている。しかし、民主党のジョー・マンチン議員(ウェストバージニア州)やキルステン・シネマ議員(アリゾナ州)は、BBB法案の規模やインフレ加速懸念などを理由に、同法案への賛否をいまだ明らかにしていない。BBB法案反対の姿勢を取る共和党は、同法案にある児童税額控除など時限付きの複数の制度につき、今後の制度延長を見越して、それらを10年程度延長した場合の財政赤字は3兆ドル程度になることを議会予算局の試算から明らかにして、上記両議員に法案に反対するよう呼び掛けた(ロイター2021年12月10日)。シューマー院内総務は、3月成立の米国救済計画で盛り込まれている現行の児童税額控除が年末に期限を迎えることなどから、BBB法案をクリスマスまでに通過させる姿勢をとる(2021年11月22日記事参照)。有給休暇取得支援や支払った州・地方税を連邦税から控除できる上限の拡大など、いまだ民主党内で調整が難航している項目もあり、最終的にBBB法案がどういう形となるか、法案成立の時期とともに注目される。

(注)上院では通常、法案可決には議事妨害(フィリバスター)を抑え込むため、クローチャー(討論終結)決議に必要な60票の賛成が必要となる。ただし、歳出・歳入・財政赤字の変更に関する法案については、財政調整措置(リコンシリエーション)を利用し、過半数での採決が可能。賛否が50票同数の場合、議長を務める副大統領の1票で採決となる。

(宮野慶太)   

(米国)

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