バイデン米政権の影響は「わからない」が4割弱、2021年度米国進出日系企業調査

(米国)

米州課

2021年12月28日

ジェトロが9月に実施した、2021年度の米国進出日系企業実態調査(2021年12月17日記事参照)では、バイデン政権の政策について聞いた。その結果、バイデン政権の政策がビジネス活動に与える影響について、「わからない」が38.4%を占め、「影響はない」(22.3%)、「全体としてマイナスの影響がある」(14.1%)、「全体としてプラスの影響がある」(13.6%)が続いた。「わからない」との回答が最多となったのは、ジョー・バイデン大統領が選挙公約で増税を掲げていたものの、連邦議会で野党共和党の反対などにより進んでいないこと(2021年11月1日記事参照)が要因とみられる。

業種別にみると、「全体としてマイナスの影響がある」と回答した企業は、自動車等(36.4%)やゴム・窯業・土石(26.7%)で高く、バイデン政権が自動車のEV(バッテリー式電気自動車とプラグインハイブリッド車)化を進めていること(2021年12月10日記事参照)などが背景にあるとみられる。他方、「全体としてプラスの影響がある」と回答した企業は、精密・医療機器や事業関連サービス(それぞれ26.3%)で高かった。

影響を与える政策は「米国法人税制」が5割台半ば

経営に影響を与えるバイデン政権の政策分野では、「米国法人税制」が55.1%と最上位で、「新型コロナウイルス対応」(44.0%)、「対中国政策」(38.1%)、「環境・エネルギー政策(気候変動政策)」(31.1%)が続いた。具体的な影響をヒアリングしたところ、「米国法人税制」については、「法人税の引き上げによる利益減少」(販売会社)や「将来に向けた設備投資に影響」(自動車等)などをマイナスの影響として懸念している企業が多かった。「新型コロナ対応」に対しては、「ワクチン接種の義務化により労働力確保が困難になる」(電気・電子機器部品)、「生産コストの上昇」(自動車等部品)などが聞かれた。「環境・エネルギー政策」に対しては、「EV化の進展が(自動車)OEMごとにばらつくことがリスク要因」(ゴム・窯業・土石)、「カーボンニュートラルに向けた政権の方向性が見えず、具体的な施策が見いだせない」(電気・電子機器部品)といったマイナス面のほか、「二酸化炭素削減に向けた技術開発や製品投入による市場拡大の可能性」(自動車等)、「5G(第5世代移動通信システム)など新しい技術を取り入れた施策が加速し、新たな事業機会が生まれる」(情報通信業)などプラスの影響を期待する声も聞かれた。

本調査では、環境問題への対応についても聞いており、脱炭素化に「すでに取り組んでいる」企業は33.5%だった。企業規模別にみると、大企業(注)で53.6%と中小企業(22.5%)を大きく上回った。脱炭素化に取り組む理由としては、「本社(親会社)からの指示・推奨」が68.2%を占め、次いで「進出国・地域の中央・地方政府による規制や優遇措置」が30.2%だった。「本社からの指示・推奨」と回答した企業に具体的に求められていることをヒアリングしたところ、「SDGs(持続可能な開発目標)に適った商品開発・生産を進めること」(繊維・衣服)や「リサイクルの推奨、再生可能エネルギーの導入」(販売会社)などが聞かれた。

調査結果の詳細はジェトロのウェブサイトに掲載されている。

(注)本調査では、大企業は総従業員数100人以上、中小企業は100人未満を示す。

(大塚真子)

(米国)

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