米中首脳会談、具体的成果に欠けるも一定の評価、米識者の見方

(米国、中国)

ニューヨーク発

2021年11月17日

米国のジョー・バイデン大統領と中国の習近平国家主席が11月15日(米国時間)に行った首脳会談に関して、米国内の有識者からは、具体的成果に欠けるものの、両国関係の安定化に向けた一歩として評価する声が出ている。

バイデン大統領と習国家主席はこれまで、電話会談を2回行っているものの(2021年9月13日記事参照)、対面(ただしバーチャル形式)での会談は今回が初となった。ホワイトハウスが公表した会談要旨外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますおよび会談後の政権高官による記者会見外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、両首脳は2国間の競争関係を責任あるかたちで管理することを主題に、3時間半にわたって率直な意見を交わした。バイデン大統領は米国の姿勢について、自らの利益・価値観を守るために同盟・友好国と協力し、自由で開放的かつ公正な国際制度を後押しすることを強調した。議論を交わした具体的テーマとしては、新疆ウイグル自治区やチベット、香港における中国の慣行や人権問題全般、中国による不公正な貿易・経済慣行、インド太平洋地域における航行の自由と安全な領空通過の重要性などを挙げている。最近の懸案となっている台湾問題に関しては、米国は台湾関係法などに基づき「1つの中国」政策にコミットしており、現状変更や台湾海峡の平和と安定を損なう一方的な取り組みに強く反対することを明確に示した。その上で、競争が衝突に転じることがないよう、常識的なガードレールが必要との認識を伝えたとしている。

一方で、両国の利益が重なる分野である、健康安全保障や気候変動、エネルギー供給の安定化、および北朝鮮やアフガニスタン、イランなどの地域での問題などについて、取り組みを進める必要性について議論を交わしたとしている。

会談翌日の16日、ブルッキングス研究所のイベントに登壇したジェイク・サリバン大統領補佐官(安全保障)は、米中の次のステップとして、(1)COP26(国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議)で発表した米中の共同宣言(2021年11月15日記事参照)の実施を含む、気候変動や公衆衛生などでの緊密な連携、(2)イランや北朝鮮における核問題に関する協力、(3)台湾問題における誤解の回避、(4)米中経済・貿易協定(第1段階協定)の実施を含む、経済問題での協議の進展、の4点を挙げた。

ブルッキングス研究所のチャン・リ中国部長は今回の会談について、両国関係のターニングポイントにはならないが、対立激化を回避する意思を世界に対しても発信したとして、成功と評価した。米国家安全保障会議で中国・台湾・モンゴル部長を務めた経験のあるカーネギー平和財団のポール・ヘインレ国際政策部長は「短期的には両国関係のリスクを減じる役割を果たすが、米中間の長期的な構造的課題はまだ対処されていない。今回はその過程の出発点になり得るかもしれない」と分析している。一方、戦略国際問題研究所(CSIS)のスコット・ケネディ中国部長は「数日以内に今後の取り組みに関する具体的な合意事項の発表があるかもしれないが、それがなければ、会談は従来の主張の再確認でしかなかったことになる」と厳しく評価している(ロイター11月16日)。

(磯部真一)

(米国、中国)

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