劉鶴・中国副首相とイエレン米財務長官が会談、率直に意見交換

(中国、米国)

中国北アジア課

2021年11月02日

中国商務部は10月26日、劉鶴・副首相と米国のジャネット・イエレン財務長官が同日午前(中国時間)にバーチャル形式で会談したとウェブサイトで明らかにした。双方はマクロ経済情勢、マルチやバイでの協力について実務的かつ率直的、建設的に交流し、世界経済の回復が重要な局面を迎える中、中米両国がマクロ政策を強化する上で意思疎通し、調整を図ることが非常に重要との認識で一致した。また、今後も意思疎通を続けていくことにも同意した。米財務省のウェブサイト(10月26日)も、ほぼ同様の内容を発表している。

しかし、両国の発表内容の違いとしては、商務部ウェブサイトでは、中国が米国に追加関税や制裁措置の取り消しや、中国企業への公平な取り扱いを求めたと明記した一方、米国側の発表はそれに触れていない点が挙げられる。

一方、米財務省ウェブサイトでは、イエレン財務長官が懸念事項を率直に提起したとしているが(懸念事項の詳細は発表なし)、中国側の発表は触れられていない。

米中双方にはさまざまな意見の相違があるが、このところ、米中両国の首脳や高官が頻繁に接触するようになっている。習近平国家主席とバイデン大統領が9月10日(中国時間)に7カ月ぶりに電話協議を実施(2021年9月13日記事参照)。スイスで10月6日には、楊潔篪・共産党政治局委員がジェイク・サリバン大統領安全保障補佐官とスイスで会談した(2021年10月7日記事参照)。

経済分野では、劉鶴副首相が10月9日(中国時間)、米通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ代表と米中通商関係に関してバーチャル形式の会談を行った(2021年10月13日記事参照)。商務部ウェブサイト(10月9日)によると、両者は次の3点について意見交換したとしている。

(1)中米経済貿易関係は両国と世界にとって非常に重要で、両国間の経済活動や協力を強化すべき点。

(2)第1段階の米中経済・貿易協定の履行状況(2020年2月21日記事参照

(3)それぞれの懸念事項を双方が表明。協議をもって解決することで合意。

第1段階の米中経済・貿易協定では、中国は2020~2021年の2年間で、2017年の輸入実績を基準とし、米国から工業製品や農産品、エネルギー、サービスを2,000億ドル以上追加購入・輸入しなくてはならないと規定している。米国のピーターソン国際経済研究所の推計(10月27日)では、中国の対米輸入目標額(サービス分野を除く)に対して、2020年の達成率は58%、2021年1~9月は68%にとどまったとしている。

2021年もあと2カ月となったが、第1段階の米中経済・貿易協定の履行を含め、経済・通商面で、米中両国が調整しなければならない課題は山積しているのが現状だ。

(宗金建志)

(中国、米国)

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