欧州委、2021年のEUとユーロ圏のGDP成長率予測をともに5.0%に上方修正

(EU、ユーロ圏)

ブリュッセル発

2021年11月15日

欧州委員会は11月11日、秋季経済予測外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。2021年のEU27カ国の実質GDP成長率を5.0%と予測し、7月の夏季経済予測(中間予測)(2021年7月8日記事参照)から0.2ポイント上方修正した。前回の包括的な予測である5月の春季経済予測(2021年5月18日記事参照)からは0.8ポイント上方修正し(添付資料表1参照)、EU経済は予測を上回る速さで回復しているとした。ユーロ圏の実質GDP成長率についても5.0%とし、夏季経済予測から0.2ポイント、春季経済予測から0.7ポイント上方修正した(添付資料表2参照)。

2021年第2四半期(4~6月)に新型コロナウイルスの感染状況が改善し、制限措置が段階的に解除された結果、EU域内の個人消費は前期比3.3%増と大きく伸びた。経済回復は広範囲に及び、内需の構成要素は全てプラス成長に寄与し、EUの第2四半期の実質GDP成長率は2.0%となった。さらに、EU域内の旅行の再開により、特に観光地がその恩恵を受け、経済回復の勢いは夏期も継続した。第3四半期(7~9月)のGDP成長率は前期比2.1%(速報値)となり、EU経済全体は、新型コロナウイルス感染拡大前の水準に回復し、拡大に転じた。

今回の予測によると、2021年はほぼ全てのEU加盟国で3.0%以上のプラス成長となるが、依然としてばらつきもみられる。ユーロ圏の主要国では、前回予測からイタリアとフランスがそれぞれ2.0ポイント、0.8ポイントの上方修正となった。一方で、ドイツとスペインはそれぞれ0.7ポイント、1.3ポイント下方修正した。

新型コロナ感染拡大が依然として最大の下振れリスク

欧州委は、成長見通しを取り巻く不確実性とリスクは依然として高く、新型コロナウイルス感染拡大の経済活動への影響は弱まったものの、域内外での感染再拡大が懸念材料だとした。特に、ワクチン接種率が低いEU加盟国では、感染の再拡大に伴って経済活動に影響を与えるような規制が再導入される可能性を指摘した。さらに、現在のサプライチェーンの制約やボトルネックの影響が長期化する可能性を挙げた。世界経済の回復とそれに伴う需要拡大の速度に供給が追いついておらず、国際物流や原材料と半導体の生産など複数の主要産業に影響を与えている。また、労働力不足の兆候に加えて、継続的で局所的に実施される感染拡大防止措置も、物流や生産面での混乱を招いている要因とした。また、エネルギー価格(特に天然ガスと電力)の高騰が経済回復の勢いを短期的に鈍化させる見通しとした。2020年に大きく下落したエネルギー価格はここ数カ月で劇的に上昇し、新型コロナウイルス感染拡大前の価格を上回っている。エネルギー価格の高騰は、加盟国によってその程度やペースは異なるものの、消費や企業投資に影響を及ぼす可能性があると指摘した。

経済予測の上向き要因としては、新型コロナ危機に伴う構造変化による効率性の強化と持続的な生産性の向上を挙げた。また、EU復興基金を原資とする投資や、域内の構造改革が生産性の向上を後押しする見通しとした。

2021年と2022年の失業率について欧州委は、EU平均でそれぞれ7.1%、6.7%と予測した。欧州委は、特に活動の再開が顕著な産業では労働力不足が表面化し始めているとし、経済の拡大に伴い、労働市場も2022年に完全に回復する見通しとした。

(大中登紀子)

(EU、ユーロ圏)

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