欧州委、2021年のEUとユーロ圏のGDP成長率予測をともに上方修正

(EU、ユーロ圏)

ブリュッセル発

2021年05月18日

欧州委員会は5月12日、春季経済予測を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。2021年のEU27カ国の実質GDP成長率を4.2%と予測し、2020年11月の秋季経済予測(2020年11月10日記事参照)から0.1ポイント上方修正した。ユーロ圏は4.3%とし、同じく0.1ポイント上方修正した。2022年はEU、ユーロ圏ともに4.4%と予測し、それぞれ1.4ポイント上方修正した(添付資料表1、2参照)。EU経済は2020年上半期に記録的に落ち込んだ後、夏に一時的な回復をみせたが、その後の新型コロナウイルス感染の再拡大で下半期に再び後退した。しかし、企業と家計が新型コロナウイルス感染拡大を抑制する規制措置などにうまく適応し、世界全体の経済成長と貿易の回復や強力な政策支援も後押しし、上半期に比べて緩やかな落ち込みに抑えられた。欧州委によると、2021年に入り、EU経済はこの数カ月で既に成長に向けた弾みをつけており、今後は個人消費と投資の回復、世界経済の回復に伴う輸出拡大がEUの経済成長を牽引すると予測した。

2021年は、EU全加盟国でプラス成長となるが、ばらつきもみられる。主要国では、前回予測からスペインとイタリアがそれぞれ0.5ポイント、0.1ポイントの上方修正となった一方、ドイツとフランスはともに0.1ポイント下方修正した。このほか、ルーマニア、アイルランド、マルタの3カ国はそれぞれ1.5ポイント以上の上方修正の一方、ラトビアやポルトガルはともに1.5ポイント前後の下方修正となった。欧州委は、2022年末までに全加盟国が「新型コロナ危機」前の水準に回復すると見込んでいる。

2021年の失業率について欧州委は、EU平均で7.6%(秋季経済予測から1.0ポイント改善)、ユーロ圏平均で8.4%(1.0ポイント改善)、2022年はそれぞれ7.0%(1.0ポイント改善)、7.8%(1.1ポイント改善)と予測した(添付資料表3参照)。欧州委は、2021年下半期から労働市場の状況は徐々に改善していくものの、雇用が完全に回復するまでには時間がかかるとし、2021年中は一部の加盟国で失業率の上昇も予測されるが、2022年にはEU全体で雇用数が増加に転じ、失業率が低下するとの見通しを示した。

成長予測の上振れ・下振れ要因は全体的に均衡

欧州委は、新型コロナウイルスが経済に影響を及ぼす状況が続く限り、成長予測を取り巻くリスクは高いとし、加盟各国政府の支援措置の撤回時期が早過ぎる場合、経済回復に水を差す可能性があると指摘した。一方で、今後の成長予測が上振れしうる要因として、米国を中心とした世界経済の回復が予想を上回り、欧州経済にプラスの影響を与える可能性を挙げた。

欧州委によると、今回の予測は、2021年第2四半期(4~6月)に各国の制限措置がある程度緩和され、ワクチンの普及によって下半期には制限措置が一層顕著に緩和されることを前提にしている。他方、2022年に住民の大部分でワクチン接種が完了したとしても、公衆衛生上の懸念から限定的な制限措置は残ると想定している。欧州委はまた、その他の重要な要素として、復興基金「次世代のEU」(2020年9月24日付地域・分析レポート参照)の下で各加盟国の復興・レジリエンス計画が実施され、ダメージコントロールから回復とレジリエンスの強化に焦点を置いた政策へ移行する必要があると指摘した。

(大中登紀子)

(EU、ユーロ圏)

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