ブラジルの一方的な関税引き下げ、揺れる関税同盟としてのメルコスール

(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ)

ブエノスアイレス発

2021年11月18日

ブラジル政府は、11月12日から2022年末日にかけて、タリフラインの87%について一時的かつ例外的に関税を10%引き下げる(削減する)。貿易審議運営実行委員会(Gecex)決議269/2021号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが11月5日付で官報公示された。

ブラジルは、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイと共に関税同盟メルコスールを構成し、対外共通関税を適用している。時限的措置であるとはいえ、ブラジル単独での関税引き下げに対し、アルゼンチンやウルグアイの反応は様々だ。

現時点で、アルゼンチン政府は特段の声明を発表していない。事前にブラジルから通知されており、かつ自動車、繊維製品、乳製品、玩具などアルゼンチンのセンシティブ品目が今回の対象から除外されていることにより、ブラジルとの関係を考慮して静観しているためだ、と報じられている(現地紙「エル・クロニスタ」11月16日)。

一方、ウルグアイの外務省と経済財務省は共同声明を発表。「対外共通関税がありながら、ブラジルがそれを逸脱して一方的に関税を引き下げたことにより、メルコスールは関税同盟ではなく不完全な統合体だと理解される」としつつ、「今回のブラジルの発表は、国際市場に打って出るためにメルコスールをより開かれたものに見直す必要があることの表れだ」と、ある意味で、肯定的とも取れる反応を示している。ウルグアイは、「対外通商交渉は加盟国一体で行う」とのメルコスールの取り決めに反するかたちで、中国との間で2国間自由貿易協定(FTA)締結に向けた予備調査を単独で開始している(2021年10月4日記事参照)。こうした事情も、ウルグアイの声明の背景にあるとみられる。

他方で、10月に開催されたメルコスール加盟4カ国の外相会談で、ブラジルとアルゼンチンは対外共通関税率を10%削減することで合意している(2021年10月11日記事参照)。その後、パラグアイもこれに合意したが、ウルグアイはいまだ合意していない。ウルグアイは、「対外共通関税率の引き下げ」と「対外通商交渉はメルコスール一体で行うという取り決めの見直し」の2つを主張している。前者は、ブラジルが強く主張したもので、こうしたことからウルグアイには、この2つはセットで合意されなければ納得できない、との考えもあるようだ。

(西澤裕介)

(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ)

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