政府が再び加熱式たばこの輸入を禁止、最高裁の判決に矛盾する可能性も

(メキシコ)

メキシコ発

2021年10月25日

メキシコ政府は2021年10月22日、官報で政令を公布し、実際のタバコの葉を加熱することで蒸気を発生させるかたちの加熱式たばこを再び輸入禁止とした。適用は翌23日から。メキシコでは2020年2月19日付官報公布政令に基づき、電子たばこおよび同部分品、電子たばこ用化学品の輸入が翌20日から禁止されていた(2020年2月20日記事参照)が、2021年7月16日付官報で公布した政令により、リキッドと呼ばれる香料を含んだ液体を加熱させることで発生した水蒸気を吸引する、いわゆる「電子たばこ」ではない、実際のタバコの葉を用いる加熱式たばこは輸入禁止の対象から除外していた(2021年7月21日記事参照)。しかし、2021年10月22日付政令では、メキシコの輸出入一般関税率表(TIGIE)のHS8543.70.18の品名表記を変更し、「ニコチン消費代替システム」(「SACN」、タバコの葉のカートリッジなどを加熱するもの)を再び加えることで、全ての電子たばこを輸入禁止の対象に戻した。

政府は政令の前文において、加熱式たばこを再び輸入禁止とする理由について、世界保健機関(WHO)やメキシコ国立自治大学(UNAM)、国立呼吸器感染症研究所(INER)などの研究結果から、加熱式たばこは従来のたばこよりもニコチンなどの毒性が強く、また消費者以外の第三者に与える副流煙の害もあり、新しい技術に興味を持つ子供の消費を促すことによる悪影響もあるとし、個人の権利は尊重すべきだが、第三者の権利や子供の最善の利益を損なうことはできないと説明している。

最高裁は電子たばこの全面的な販売禁止を違憲と判断

最高裁は2021年10月19日、大法廷において、電子たばこの輸入禁止の法的根拠である「たばこ管理一般法(LGCT)」(2008年5月30日公布、同年8月28日施行)の第16条VI項は、憲法が定める「販売の自由」を侵害するとの判決を下した。ただし、最高裁は、同条同項に基づく全面的な販売禁止について違憲との判断を下しただけで、電子たばこの販売を認める立場を表明したわけではない、としている(最高裁10月19付プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

今回の政令の内容は、最高裁の10月19日付判決に矛盾する可能性があるため、加熱式たばこを販売するフィリップ モリスやR.J.レイノルズなどが、アンパロ(注)を提訴する可能性が高いと報じられている(現地紙「レフォルマ」10月23日)。

(注)行政府や立法府、司法府などの行為により、憲法が保障する国民や企業の基本的権利が侵害された場合、当該行為の差し止めと無効を求める裁判制度。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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