米エネルギー情報局、2021年の石炭火力発電は7年ぶり増加の見通し

(米国)

ニューヨーク発

2021年10月20日

米国エネルギー情報局(EIA)は10月18日、2021年の石炭火力による発電量が前年比で22%増、2014年以来7年ぶりに前年から増加するとの見通しを明らかに外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。先日公表した短期エネルギー予測(2021年10月19日記事参照)を基に、発電源の内訳を分析した。

石炭発電の増加の主因は、天然ガス価格の高騰にある。米国の火力発電では、主に天然ガスと石炭が用いられるが、天然ガスの価格は石炭価格に比べて変動が大きい。2021年2月には、テキサス州を中心に襲った寒波の影響により、その価格(注)はそれまでの3ドル程度から約16ドルまで上昇した。足元でも、欧州を中心に天然ガス価格が上昇している影響により、米国でも高騰が続いており、年初来の平均ガス価格は平均4.93ドルと、前年の2倍以上の価格をつけている。一方、石炭価格は2ドル程度で安定して推移しており、天然ガス発電と比べて価格競争力で相対的に優位に立ったことから、石炭火力の利用が進むことになった。

バイデン政権が、中国に対して石炭火力発電への資金供給停止を求めるなど(2021年9月6日記事参照)、石炭火力発電の利用の段階的停止を各国に呼び掛けている中、自国では石炭火力発電が増加するという逆進的な結果となったが、EIAはこの傾向は続かないと予測する。2013年以降、米国では新規の石炭火力発電所の建設は行われておらず、その発電容量が2010年以前に比べ約3割減少している点や、発電所の石炭在庫が相対的に少なく、稼働中の炭鉱での石炭生産も最近の石炭需要の増加と比べて緩やかで、その供給力に限界がある点、さらに、天然ガス価格の若干の低下が見込まれる点を踏まえ、2022年の石炭火力発電量は前年比で約5%減少すると予想している。

英国で2021年11月に開催される国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で議長を務めるアロク・シャーマ氏は「石炭を歴史の中に葬る」という目標を掲げ、石炭火力発電の廃止に強い意欲をみせている(ブルームバーグ9月30日)。しかし、米国では、自然災害の発生や経済活動の再開により石炭火力発電量が高まるという実態が浮き彫りとなった。石炭火力発電について、COP26でどういった結論が導き出されるかが注目される。

(注)天然ガス価格、石炭価格ともに、100万英国熱量単位(Btu)当たりの価格で表される。1Btuは約1,055ジュール。

(宮野慶太)

(米国)

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