ケリー米特使が日本と中国を訪問、中国に石炭火力発電への資金供給停止など要求

(米国、日本、中国)

ニューヨーク発

2021年09月06日

米国のジョン・ケリー気候変動担当大統領特使は8月31日~9月3日の日程で日本と中国を訪れ、政府高官と気候変動対策の強化について協議を行った。

日本では、菅義偉首相をはじめ、小泉進次郎環境相や茂木敏充外相、梶山弘志経済産業相、加藤勝信官房長官らと相次いで会談し、気候変動分野における日米間の今後の協力関係を確認するとともに、11月に英国グラスゴーで開かれる第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)の対応を協議したとされる。

中国では、解振華気候変動担当特使と直接会談するとともに、中国外交トップの楊潔篪共産党政治局員や王毅国務委員兼外交部長とオンラインで会談した。AP通信(9月3日)によると、中国側からは「気候変動対策で協力するに当たっては、両国全体での関係改善が不可欠だ」として、人権問題などで悪化する両国の関係改善を求めたもようだ。これに対して、会談終了後にメディアの質問に答えたケリー特使は「(気候変動対策は)イデオロギーや政治問題とは同一ではない」と述べる一方、「ジョー・バイデン大統領は適切な時期に中国と対話をしたい意向と理解している」と述べ、関係改善に向けて両国の首脳会談実現を目指す意向を示した(「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版9月2日)。

今回の会談は、前回4月にケリー特使が訪中した際の共同声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに沿って協議が行われたとされる(2021年4月20日記事参照)。中国との会談の詳細について、訪問が終了した9月3日時点で米国政府の声明などは出ていないが、各種メディアによると、ケリー特使は中国に対して石炭火力発電への資金供給停止を要求するとともに、温暖化ガス(GHG)排出量削減目標(注)のさらなる強化を要請したが、中国側は「わが国には既にGHG削減目標を達成する独自の工程表がある」と反論したとされる(「サウスチャイナ・モーニングポスト」紙電子版9月3日)。

今回、中国側からまずは気候変動問題以外での関係改善を求める考えが示されたことから、これまで気候変動問題で協働を模索してきた両国関係に微妙な変化が生じている。中国側は引き続き米国と対話と協議を続けていくとしているが、COP26に向けて両国の協力が今後どこまで進むかが注目される。

(注)2030年までに二酸化炭素(CO2)排出量をピークアウト、2060年にカーボンネットゼロ達成(2021年7月27日記事参照)。

(宮野慶太)

(米国、日本、中国)

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